25
彼と過ごした日々。彼を愛した気持ち。
決して忘れないだろう。でも、それに捕らわれずこれからは生きていけたらいい。
胸を張って、堂々と。
途絶えるはずだった人生に出来た、新しい道を歩いていけたらいい。
そんなことを思いながら、奏は彼が死んでから初めて、心の底から泣き続けた…。
◆
あの日は、泣き疲れて寝てしまった奏を病室へ連れて行き、すぐ帰った。それから3日。本当は次の日にでも会いにいきたかったのだが学園を抜けられず、3日経ってしまいようやく病院までくることが出来た。
その日は、奏のご両親に死ぬほど感謝された。どうやら目を覚ました奏が、今までごめんとちゃんと目を見て謝ってきたらしい。
あなたのおかげです、と泣きながら感謝された。
奏は、少しずつ笑みを見せるようになっていた。特にシキと戯れているときは本当に楽しそうで、少し妬いてしまうほどだ。
だが、日が経つにつれ、次第に奏の様子はおかしくなっていた。
おかしい、というか、智春が帰るとき、酷くツラそうな顔をするのだ。
これがただ寂しいと思ってくれているだけならよかったのだが、そうではない。
智春も薄々そのことに気づき始め、そして次同じことがあればちゃんと話しをしようと決心した。
[*前へ][次へ#] 【戻る】
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!