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ぐぐーっと伸びをしてあたりを見回す姿にククッと喉を鳴らせば、猫は智春の膝の上に飛び乗り、そして奏を見つめた。



「シィ、…あー、シキだ。噛まねぇから触ってみるか?」


「し、ぃ?…しぃ、く?」


「シィは愛称みてぇなもんだ。…けど、まぁ雄だし、シィくんでもあるな」



その黒猫は、去年のクリスマス、ある生徒にもらった子だ。
不思議なことに亡くなった四季と似通った行動をするところがあり、自然と "シキ" と名付けていた。

四季が死んだ寂しさを猫で紛らわしている。そうも見えるが、実際心が軽くなったのは事実だ。
それに、猫の世話やら保険医の仕事やら勉強会やらで、余計なことを考える時間がなくなった。

全て、シキがきてからのことだ。



「しーく、しぃくん…っ」


『…にゃ』


「…んな風に泣くな、だと。どうせ泣くなら、全部吐き出すように泣け」


「しぃくんっ」



愛しの人の名前を呼んで、ただ涙を流すだけ。そんな泣き方、ツラいだけだ。
そして何も解消されない。
吐き出すことが出来ず、どんどん心の闇が深くなっていく泣き方。

シキはそんな奏に擦りより、ペロペロと涙を舐めた。
奏もシキをぎゅうっと強く抱き締め、智春と同じように猫に愛しの人を見ているのか、ただ繰り返し名前を呟く。


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あきゅろす。
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