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暴れない代わりに、泣いた。
気がつけば涙を流していて、そして自殺未遂をするようになった。

元々なにも置かれていなかった部屋。点滴の管を首に巻いて死のうとしたり、花瓶を割って破片で手首を切ろうとしたり。
けれど、どれも本気ではなくて。まるでそうすれば愛する人が止めにきてくれると思っているかのようだ。

いや、本気であとを追おうと思った時点でその死を受け入れたことになるため、それだけは避けようとしていたのかもしれない。


しかし、月日の流れはどんなに傷ついた心も多少は癒やしてくれるというもので。
それからしばらくして奏はより落ち着きを見せ、外にも出るようになった。

部屋も、鉄格子がはめられているものの窓のある部屋に移ったし、ほんの少しずつだが食事もとるようになった。
相変わらず喋ろうとはしないが、ようやく奏の中の時間が動き出したらしい。

それが、最愛の人、信司が亡くなってから4年経ったころのこと。







(あっつ…)


男は、羽織っていた白衣を脱いで腕にかけ、ネクタイも緩め外に出た。
冷房が効いていた病院内とは違い、外はジメジメムシムシと暑く、いるだけで体力を奪われていく。

どこか静かで涼しげな場所で休みたい。そう思い、日陰を求め敷地をさ迷っていると、ちょうどよく木陰にあるベンチを見つけた。


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