2 「いひゃい…」 「だ・れ・の・せ・い・だ・よ!」 「…おへ?」 「そうだよ!早くしねぇと遅刻すんだろうがっ」 「あ、ひょっか。んむ…じゃーヒデ先にいっていーよー」 もうおれ置いてって、と由良がやる気なさげにそういうと、秀和は離した手でまた同じように顔を掴んだ。 されるがままの由良に、女子生徒からはクスクスと笑い声があがる。 「そうしたら由良、絶対こないだろーが。ほら早く着替えて体育館いくぞ」 「置いてけばいーのに…」 「何かいったか?」 「んー」 (…ったく、1人になることの危険性も分かってんのか…?) 今や由良は、ただの『無気力な生徒』として有名なだけではない。あのレッドデビルの飼い主としても有名なのだ。大抵の人は恐れるか、この無気力さに呆れるかのどちらかだが、中にはそうでない人もいて。 現に今も、廊下にたむろっていた不良がずっとこちらを見ていた。噂と、本人のこのギャップ。不良にとっては格好の的になってしまうだろう由良を、なるべく1人にはしたくないのだ。 「せめて逃げ足だけでも早きゃな…」 「…ヒデから逃げれるのに…?」 「そーそー、ってちげぇよアホ。もう俺に迷惑かけないでくれっていってんの」 「ごめんねお母さん」 「だからちげー!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |