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家の前にいた青年は、うずくまってはいたがとても大きく見えた。恐らくこの男性よりも遥かに大きいだろう。だから1人では無理だ、といっているのに…。

猫をお腹に乗せて全く動く気配のない少年に再び溜め息をつき、男性はまた外へ出た。



「…由良のなんでもかんでも拾う癖は治してほしいな…」



普段はあんなに無気力なのに。
いや、そうしたのは…自分なのだが。だから強くいえず、いつも甘やかしてしまう。

男性は「よしっ」と気合いを入れ、青年の体の下に腕を通し、力を入れた。…が、やはりというべきか、持ち上がらない。あの少年が出てくる気配もなく、仕方なしに上半身だけを持ち上げ、引きずって中へ入れる形になった。



「これは…凄い怪我だな」



明るいところで見ると酷さがよく分かる。客間へ移し、とりあえず出来るだけの治療をしてあげることにした。



「由良くん、ご飯もう少し待っててね」

「んー…いーよ、いらないから」

「食べなきゃダメ。…寝ちゃダメだからねー?」

「んー」



救急箱を持ち、客間へ戻る。
打撲痕、たくさんの切り傷。血は止まっているが刺し傷もある。それらを消毒し、傷薬を塗って包帯を巻く。

熱があることにも気づき、おでこには冷えピタシートを貼った。あとは、この青年が起きて元気になればいい。拾った、なんて言い方をしたけれど、この青年にだって帰る場所があるはずなのだから。



(大きな犬を拾いました。
怪我をしていて、とても痛そうです。名前はまだありません。早く元気になりますように。)



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あきゅろす。
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