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それを見て、秀和はため息をつく。これ以上は求めても無理だ。本人に怪我がなく、無理強いされてるわけでもなさそうなだけ良しとしよう。
「まーでも気ぃつけとけよ?レッドデビルと仲よくても、それを狙うやつらもいるってこと忘れんなよ」
「あー」
「残り1年よろしくな。頑張ってこうぜ」
「…頑張ったとこで、何もなんないけどね」
「今ならなる。やる気出してこうぜ、な?」
ポン、と肩に置かれた手に、暗い顔をする由良。その様子に秀和は少し困ったような顔をし、一旦自分の席に戻っていった。
頑張っても意味がない。無駄なこと。それを知ってしまったとき、由良は無気力になった。きっかけは、小学校6年生のとき、母親が病死したときから始まる。
◆
平凡な家庭だった。エンジニアの父に、専業主婦の母、そして由良。夢だった一戸建ても買い、すくすくと育つ由良を両親は幸せそうに見ていて。もちろん由良自身、幼いころは普通の子供だった。
しかし、由良が5年生のときに母親が病気を患い、入退院を繰り返すようになって。父親は医療費を稼ぐため、会社に長く残業するようになって。それでも病気と闘う母親を見て、由良も一緒に頑張ってきた。…が。
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