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「道、ラブが知ってるから」
「ん…」
『ワンッ!』
「…ふは、ついてこいって」
「由良、楽しそ、う」
恐らく、楽して散歩が出来てるからだろうが、そんな由良に銀も嬉しそうな顔をした。周りからの視線はいささか痛いほど突き刺さる。でも、由良が笑ってくれているなら別にいい。
「銀、重い?」
「軽い」
「んー…重かったらいって。おれ歩くから」
「…ほんと、か?」
「あーんー…多分」
歩く気なんてさらさらない由良に、銀はクツクツ笑う。自分がしたくてしてるから、おろすつもりなんて銀にも毛頭ないのだが。そしてこの移動手段に、2人して味をしめるのはいうまでもない。
無気力な由良にとって、抱っこで移動はとても楽。由良大好きな銀にとって、密着出来て常に一緒で周りにも牽制出来るなんて、お得すぎる。なんて素晴らしい。お姫様抱っこという存在。
「…あ、うんこ」
「あ゙?…ど、する」
「とらないと。ラブ自分でとってー」
「……」
「ラーブー」
とるわけない。結局一度おろしてもらい、由良はうげうげいいながらちゃんと始末をし、また銀に抱っこされて家まで戻ることになった。久々に出た外、元々ご近所の噂の的だった由良は、今回のことでさらに注目を浴びるようになってしまったようだ。
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