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むぅ、と頬を膨らました由良がいとも簡単にソファーから起き上がる。パパはにっこりと笑みを浮かべ、銀は簡単にいく気になった由良に少し驚いているようだ。由良の無気力具合はずっと一緒にいて分かっていたし、あの銀をこき使う場面も多々あったくらいだ。
なのに、こんな簡単に。
「でぃーぶいだ、DV」
「はいはいよろしくね」
「うぅ、めんどくさい…銀も散歩いくよ」
「俺、メシ、別に…いい」
「…育ち盛りはいっぱい食べるの」
め、と怒る由良は我が家の犬猫に甘く、特に銀は特別だ。パパもそれが分かっていてのあの脅し文句。嫌々ながらも外へ向かう由良のあとを、銀はパパを睨みつけながら追いかけた。
靴を履き、中庭へ回ってラブに首輪をつける。由良にとって大きな犬2匹連れての散歩、…のつもりだろうが。背を丸めてやる気なさそうに歩く由良の姿を見た銀は由良を呼び止め、背中と膝裏に手を差し込んで由良を持ち上げてきた。
――ひょい、
「…っ、わっ」
「…由良、これなら…疲れねぇ」
「ああ…ほんとだ、凄い楽、さすが銀」
いーこいーこ、と撫でることは体勢的に出来なかったが、由良は物凄い笑顔を浮かべた。いわゆるお姫様抱っこ。普通は嫌がるとこだが、歩く気力すらなかった由良にとってこれほど楽なことはない。
されるがまま、ラブの散歩にいくことになった。
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