[携帯モード] [URL送信]
29
「…き、だ、由良が好きだ。俺は由良の犬、だけど…由良が好きだ」

「…ファーストキス…」

「!、…わ、わりぃ…ごめんな、さい」



一瞬、嬉しそうな顔をした銀だったが、嫌われたくない、捨てられたくないと何回も謝った。見た目がいかにもな不良様なために、どうにも由良に対する態度は違和感がある。しかし、由良も由良だ。そんな銀がどうにも可愛らしいわんこにしか見えないらしく、ちょいちょい、と銀を側まで呼び寄せた。

殴られる覚悟を持ち、銀が近づくと…、



――なでなで

「…!?」

「おれも銀好き。いーこいーこ」

「由良…っ」

「でもいきなりちゅーはだめ。おれ死ぬ」

「わ、かった」



いきなりじゃなきゃOK、と、言葉の揚げ足をとって頭に叩き込んだとは由良はつゆ知らず。そのままパタリとベッドへ倒れ込んだ。ちらり、と覗くわき腹にはやはり綺麗な真っ赤なアトがついていて、銀は瞳の奥をほんのりとギラつかせた。

しかし、由良が無気力とはいえ、本当に嫌だったら何かしらの抵抗はするだろう。どうでもいい、早く終われと思っていても、嫌なものは嫌なのだから。それを口に出すことぐらいはするはず。行動に起こさない分、口や顔が示すのだ。


[*前へ][次へ#]

34/168ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!