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「…お帰り、銀」
「…っ、た、ただ、い、ま」
「また怪我してる…父さんいないときに限って…」
「おっさん、いない?」
「あーんー…どっかいった」
今日は外ではずせない大事な仕事があるから帰るのは夕方だよ、お昼はちゃんと食べてね。
そう、朝言い残して出て行ったのだが、どうやら由良の耳には届いてなかったらしい。そういえばまだ帰ってきてないや…なんてボヤきつつ、銀の手をとってリビングへ。銀がされるがままソファーに座ると、由良はそこらへんをゴソゴソと漁りだした。
「どこ…あーない、んー?」
「ゆ、由良?」
「怪我するのはいいけどさぁ、父さんいるときにしてよ」
「…ごめ、ん」
「ん。痛いとこ、ないの?」
いくつかの打撲痕。そして銀のではないだろうが、赤い血のついたシャツ。喧嘩してきたのは一目で分かり、由良は自ら治療をしてあげるといっているのだ。
由良がしてくれることに驚きつつ、特にと首を振ると、ん、と由良はまた小さく頷く。
「…あーあった。次怪我してきてももうおれしないからね…」
「な、んで」
「…?」
「喧嘩、なんで、怒んねぇ」
「別に悪いことじゃないでしょ…?おれはしないけど」
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