21
そう、銀だ。
なぜか中に入らず、困ったようにもう15分ほど立ちすくんでいる。
左ポケットには鍵。右手はチャイムを押そうかどうかと宙をさまよわせ、ときおり家の中を覗くようにチラチラ見上げては舌打ちをしている。…怖い。確かに、不審者だ。
(…忘れ、てたら)
銀はそれが怖くて中に入れずにいた。忘れられていたら。もしくは、なんで戻ってきたんだという顔をされたら。しかしいつまでもこうしているわけにもいかず、銀は勇気を出してチャイムを押した。
――ピンポーン
「……」
出て、こない。
何でだ、と疑問に思いつつもう一回、そしてもう一回、二回、三回。チャイムを押す間隔は短くなっていき、銀もイライラが募っていく…と、そのとき。
ガチャリ、と鍵の開く音がした。けれどドアは開かない。
銀は眉間にシワを寄せながら、勝手にドアを開いた。
「っ、…由良」
「いっぱいうるさい、銀。鍵、持ってたでしょ」
「も、持って…た」
「使えばおれ動かなくて済んだのに…」
ダルそうに突っ立ってこちらを見ていた由良がそこにはいて、銀はどこか嬉しそうな雰囲気を出した。鍵を閉めなおし、由良のもとへ寄る。
すると、ぐぐ、と顔をあげて少し見つめてきたあと、由良はこういってくれた。
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