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パン、と顔の前で手を合わせる男性だが、少年はチラリと一瞥しただけで頷くことはしなかった。一緒に床に寝ているにゃんこの喉をくすぐり、「コンソメスープでいいじゃん」と、買いにいかなくていい提案をする。
男性は、困ったように苦笑を浮かべた。
「そんなこといわずに頼むよ。由良くん、ここ最近ずっと外出てないだろ?」
「出る意味が分かんない」
「若いのにそんなこといわない!ほら、ジュースでもお菓子でも、好きなの1つ買ってきていいから、ね?」
「父さんおれそんな子供じゃないよ…」
お菓子で釣られるわけないし。そうブツブツ文句をいいながらも、ようやく少年は体を起こして男性を見た。
至極、嫌だ、と顔に出ている。
「ありがとう由良くん!さっすが由良くん!」
「…誉めたとこでやる気になると思ったら大間違いだから」
「まーそんなこといわずに。気をつけていっておいで」
「最悪…」
のっそり立ち上がる。
ゆったり移動する。
その後ろ姿からは、"気力" というものが感じられない。
男性は、その後ろ姿を見て小さく1つ、溜め息を漏らした。
◆
――ズル、ぺた、
得体の知れない何かが、歩いている音。…ではなく、先ほどの少年の足音が閑静な住宅街に響く。
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