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パン、と顔の前で手を合わせる男性だが、少年はチラリと一瞥しただけで頷くことはしなかった。一緒に床に寝ているにゃんこの喉をくすぐり、「コンソメスープでいいじゃん」と、買いにいかなくていい提案をする。

男性は、困ったように苦笑を浮かべた。



「そんなこといわずに頼むよ。由良くん、ここ最近ずっと外出てないだろ?」

「出る意味が分かんない」

「若いのにそんなこといわない!ほら、ジュースでもお菓子でも、好きなの1つ買ってきていいから、ね?」

「父さんおれそんな子供じゃないよ…」



お菓子で釣られるわけないし。そうブツブツ文句をいいながらも、ようやく少年は体を起こして男性を見た。

至極、嫌だ、と顔に出ている。



「ありがとう由良くん!さっすが由良くん!」

「…誉めたとこでやる気になると思ったら大間違いだから」

「まーそんなこといわずに。気をつけていっておいで」

「最悪…」



のっそり立ち上がる。
ゆったり移動する。
その後ろ姿からは、"気力" というものが感じられない。

男性は、その後ろ姿を見て小さく1つ、溜め息を漏らした。







――ズル、ぺた、


得体の知れない何かが、歩いている音。…ではなく、先ほどの少年の足音が閑静な住宅街に響く。


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あきゅろす。
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