13
相変わらず銀は警戒しているが、由良には少し心を開くようになってきてはいて。由良自身も銀を犬扱いし、相手が不良ということに全く警戒していなくて。
お風呂場へ向かう銀のあとを、のそりのそりと追いかけていたとき、それは起こった。
――ピクッ
「誰だ!」
「っ、…うあ゙っ!?」
「あ゙…?…あ、ゆ…ら」
後ろからあとを追われ、ついつい癖でしてしまった行為。強く睨みを効かせ、振り向き様に確実に相手の首を片手で握るように掴み、壁に押しつけていた。もちろん、身長差から相手の足が浮くようにわざと少し持ち上げて。
これを、何の害もないはずの由良に。
咄嗟に手は離したが、元より握力も強い銀。首には赤く痕が残り、苦しそうに咳き込んでいる。異常を察知したのか、由良パパも顔を覗かせて由良に駆け寄り、背中をさすって怖々と銀を見上げた。
「ぎ、銀くん…?これは、一体…」
「っ…し、知るか。ウゼェッ」
「銀くん!」
「げほっ、…あ゙ー…痛い…」
「…っ、はっ、よええ、奴」
そういう銀の表情は、こちらを向いていないためによく分からない。けれど声色は、そう思ってないようなもので。わざとじゃない。でも、それを謝る術を銀は知らないだけ。銀は拳を握り締め、ドタドタとそのままお風呂場へいってしまった。
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