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せっかく呼びにいく気になったのに…と少年はさらにやる気をなくし、ソファーへ腰掛けボンヤリと青年に視線を送る。
男性は、中へ入ってこない青年の腕を引いて入れようとした…が、バッとその腕を振り払われる。そして、睨みつけられて、
「……誰、だ」
「ああそっか、警戒してるのかな。大丈夫、何もしないよ、赤飼っていいます」
「……」
――チラッ
「あっちは息子の由良。由良くんが昨日の夜、君を家の前で見つけたんだ。勝手に手当てさせてもらったけど、まだ痛いとことかある?」
「触ん、な」
べし、と伸びてきた手をはたき落とす。男性…由良のお父さんは、困ったようにうーん、と笑みを浮かべた。
由良パパは平々凡々な45歳のエンジニア。仕事は主に家で済まし、シングルファザーとして由良の育児を優先してきた、なかなか気前のいいお父さんだ。しかし青年は由良パパには目もくれず、ソファーの背に顎を乗せてぐたりとこちらを見ている少年、由良へ視線を送った。
「…なに…?」
「お、前…」
昨日なぜか同じ布団で寝ていたやつだ、と青年は気づく。
赤飼由良。
父親の遺伝子を継いだ黒髪平凡な少年だが、ここまで読んでいただいて何となく感づいてはいるだろう。そう、無気力少年なのだ。
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