プロローグ
――ドサッ
『ぐっ、…あ゙』
「はぁっ、…は、クソ、が」
夜。
人通りの多い道から外れたそこに、1人の青年が息を乱して立っている。
足下には倒れうずくまるたくさんの人。不良の喧嘩。この青年もいくつか殴られた痕があるし、ナイフで斬りつけられた痕もある。
1対多数。
それでも勝ったこの青年。しかし、もう体力も限界にきているのか、立っているのがやっとといった様子だ。
「…チッ」
『…っゔ、ま、て…っ』
「キエロ」
『ぐぁ!』
この青年の圧倒的な力を前にしても、まだ手を伸ばしてきたその不良を蹴り上げ、青年はその場からフラフラと立ち去る。
もう、絡まれたら次はない。
早く、早く安全なところへ避難しなければ…。
◆
「ああー…しまった、買い忘れた」
夕飯作りのためにキッチンに立つ男性は、冷蔵庫の中を確認して情けない声をあげた。今日はシチューだというのに、牛乳がない。
仕方ない、と男性は火を止め、リビングの床に寝転がる少年のもとまで移動した。
「由良くーん、お使い頼まれてくれないかなー?」
「んー」
「牛乳がないんだよー。ね、お願い由良くん」
「父さんいってくれば…?」
「今日仕事の大事な電話かかってくるから家から出れないんだよ。由良くんこのとーり!」
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