* 殴った頬を、労るように撫でてくる。けれどその手にすら恐怖を感じた優人は小刻みに体を震わし、目を瞑った。その瞬間髪をひっつかまれ、「見ろ」と凄まれる。 優人は、恐る恐る目を開けて、明人を見た。にっこり、微笑んでいるのに、とても怖い。 「ずっとずっと見てました。好きです愛してます。出来れば僕だって優人くんを傷つけたくないんです。だから…僕のいうことを聞いて下さいね、優人くん」 「っ…」 「返事!」 「っ、は、はいっ」 「…ふふ、一生離しません。ああ、夢のようです、愛してます…っ」 繋がれた鎖。抵抗すれば殴られる恐怖。外に出ることの叶わない環境。与えられる気持ちは違えど、昔に逆戻りしたようで。優人は、両親すら思い出し、瞳の光を闇に変えてしまった。 ああ、これじゃああの頃と何も変わらないね、優人。 「優人くん、あーん」 「っ…」 「ほら、お口を開けて下さい」 「や、め、…っゔ!」 「開けろっていってるのが分からないんですか」 殴られ、冷たい目で見下ろされる。それに体を震わしているとまた手を振り上げてきて、優人は体を強ばらせて慌てて口を開いた。ぴたり、と止まる明人。 [*前へ][次へ#] [戻る] |