* 下を向いていたから、少し自信はなかったけど。でも上を向いたその人は確かに優人で、省吾はパッと笑みを浮かべて優人の前の席に腰掛けた。驚く優人だが、"2人の秘密" 以来優人自身も心を開きつつあるため、ほんの小さな笑顔を浮かべ省吾を見やる。 「本を読むときはいつもそうしてるのか?」 「…?」 「髪。耳にかけて…なんか雰囲気変わるな。可愛いっつーより、綺麗だ」 「き、綺麗、なわけないで、すっ。ただ邪魔、だから…っ」 「クク、少し耳が赤くなったな」 やっぱり可愛い。そういって省吾は優人の耳にソッと触れた。ピクリ、と反応して下から恐る恐る見上げてくる優人に、ドキリと胸を高鳴らせた…そのとき。 ――ドンッ! 「っひ、!?」 「ああ脅かしてごめんなさい優人くん。会長、これが頼まれていた資料です」 「あ、ああ、助かる」 「さっさと持って戻ったらどうですか?」 ニコリ、と。顔は笑っているのに、なぜか恐怖を感じる。そういうことに敏感な優人は小さく体を震わし、縋るように省吾を見た。けれど省吾は動じてないのか資料を手に、見つめてくる優人の髪をくしゃりと撫でて笑みを浮かべ、いってしまう。 [*前へ][次へ#] [戻る] |