* 手が、震えている。それは優人だけではなく省吾も同じで、聞くことに怯えているようだ。きっと省吾は、もう確信を持って聞いてきている。優人にもそれが分かったが、そうです、なんて本当のことをいえるはずがなかった。 まだ、なんとか誤魔化せば。 「ち、ちが、先輩、が…かっこよかったの、で」 「…八木照と話しているのを、聞いた」 「っ、」 「なぁ…優人は、あのときの少年、なのか…?」 …もう、隠しきれない。いつ、話を聞かれていたのか分からないけれど、それを聞いたからこそ、省吾はこうして確認をとってきたのだ。目を泳がせ、迷った挙げ句、優人はほんとに小さく頷いた。 省吾が息を飲み、顔を青ざめてうなだれる。 「…悪い、俺は、秋山になんてこと…」 「あ、謝らないで下さ、!…僕は、あのとき、あなたに救われた、んです」 「俺の罪を擦り付けられて救われるわけねぇだろ!」 「っひ!…ほほ、ほんと、に…あの、ぼ、僕」 「ぁ…わ、悪い大声出して」 「っ…あの日、まで、僕は…監禁されていた、んです」 両親に。 小さな声で優人が真実を告げると、省吾は驚いたように刮目し、言葉をなくした。優人は昔を思い出したくはないが説明をしなきゃいけない、と、掻い摘んで話していく。 [*前へ][次へ#] [戻る] |