返済と、 『よぉ香澄チャン。今週の分は用意出来てんのかぁ?』 「……はい、これ、お願いします」 『確認するから待ってろ』 今日は、週に一度ある借金返済の日だ。今週は82万円。 いい調子じゃん、とか思うだろ? でも相手は闇金融。 利子の分でほとんど元の分は返せてないんだ。一年以上も返し続けてるのに、終わりなんて見えてこない。 詐欺まではたらいてるのに、減っていかない。 最悪だ。 『……82万ね、まぁ次もこの調子で頑張れよぉ』 「ありがとう、ございました…」 ……──なんで! なんで僕がこの男に頭を下げなきゃいけないんだっ。 何度そう思っただろう。 でも相手はヤクザ。自分の身と、僕に親切にしてくれてる周りの人のことを考えて、相手の機嫌を損ねないよう気をつける。 そして、今日もまた、僕自身のために詐欺をはたらくんだ。 「……いっそのこと死ねたらラクなのに…」 今日はホームセンターでのバイトが休み。夜遅くまでやっていれるよう、今のうちに少し寝とこうかな…。 ▼北斗side 天沢といえば、教育に力を入れているグループだ。 現に俺が通っているBL学園も、姉妹校のGL学園も、親が経営している。 つまり、理事長の息子だ、この俺──天沢北斗──は。 だが親父はあまり好きではない。なるべく己の力で生活していくために、株で小遣い以上の稼ぎをしている。 そんな俺につくのは、世話役の矢野。コイツと一緒に、つい先日、夜の街を歩いていた。 「……ん?なんだアイツは…」 「え?…さぁ…自分の身体を売っているのでしょう」 「はっ、低俗だな」 そいつに何があったかは知らないが、こんなところで男が男を誘うなど、腐っている。 学園もここも、全くもってツマラナい場所だ。 むろん俺は男に興味などない。 ただ、普通のガキがこんな時間にホテル街にいたから目をひいただけだ。 だからこそ帰るぞ、そういって踵を返すつもりだった。 ……だが、俺は一瞬にしてアイツに捕らわれてしまったんだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |