だからウリ詐欺してます。 あの、男の子だった。 必死の形相で、手にお金を持ってホテルから出てきたんだ。 すぐに分かった、逃げてきたんだと。 それなら男としなくていい。 危険はあったけど、僕は…それを真似た。そして今日まで一応何もなくきたわけだ。 『…君、こんな夜中に何をしてるんだ?』 「オニイサン…ね、僕お金なくて困ってるの。僕を…買って?」 『なっ!?な、何をふざけたことをっ!』 なんだ、声をかけてきたからソレ目的の人かと思った。 マジメな人だ。 でも…そういう人こそ、実は騙しやすかったりする。 ……はは、汚れてるなー僕。 とにかく金づるを逃がさないために男の胸に抱きつき、自分なりに研究した "誘う顔" をする。 上目遣いに、口は薄く開けて、舌を覗かせる。 ……平凡がやっても、あまり意味ないだろうけど。 「お願い…満足させるから…買って?」 『っ…そ、そんなに困ってるのか…?』 「うん、凄く困ってる…」 『わ、分かった…ただし、口外はしないでくれよ?』 「もちろんだよ。ありがとう、カッコイいオニイサンッ」 ああ、キモイ。 わざと出す甘い声も、マジメな顔して鼻の下を伸ばすこの男も。 でもお金のためだから仕方ない。じゃないと僕の身が危ないから仕方ない。 ホテルに誘導してくれる男に素直に従い、ごめんなさいと誰にいうでもなく呟いた。 「……はぁっ、はぁ、……は…っ」 ──12時、帰宅 家に帰ってくると凄く安心する。だって、僕がしてるのは詐欺だ。 だからいつも恐怖と隣り合わせで、男を騙している。 ドサリと畳の上に横になれば、お金のカサッという音がし、それらをポケットから出した。 14万5千円。 今日は少ない方だと思う。 でも、僕にとっては大金だ。 そのお金を封筒にしまい、布団を敷いて今日は終わり。お風呂はいつも朝に入るんだ。 スゥ…ッと意識が薄れていく。 精神的にも体力的にも、疲れが溜まってるから寝付くのは早いし眠りも深い。 ……まさか僕をずっと見ていた人がいたとは知らず、僕はグッスリと眠ってしまった…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |