12
──ウィーン
「……あっ、会長、お疲れ様です」
「チッ、全くだ」
「あれ?頼んだ彼は…?」
「あ゙?……てめ、さっさと入れ。閉まるだろうが」
「ぅあ、はいっ」
い、いつの間に扉が…っ。会長に促されて慌てて入ると、やっぱり部屋の中も綺麗だった。……のに、何だろう、もったいないと思ってしまうのは。その原因を探そうと部屋を見渡したけれど、途中で声をかけられその人の方に向き直った。
「えっと…急に呼び出したりしてごめんね?四月一日優君…で合ってる?」
「四月一日ぃ?誰だソイツ」
「え…誰って、この子ですよ。メールで名前乗せたじゃないですか」
「シガツツイタチじゃねぇのか、ややこしい」
「す、すいません。ワタヌキって読みます」
訂正する間も与えてくれなかったのはそちらですけどね。会長はまるで一仕事終わったかのようにイスにドカッと座り、目を瞑った。あ、ゴミ箱貸してもらわないと…って、うわ、ゴミいっぱい。しかも分類されてないし…っ、ここは俺の部屋じゃない。ガマンガマン。
「えと…四月一日君?」
「あっ、はい!何でしょうっ」
「うん、ここに呼んだ理由だけど…とりあえず座ろうか」
それは助かる。そう思って近くのソファーに座ろうとしたら、この人までこっちに来て…こともあろうか、ソファーを一回はらった。チリ一つ乗ってなさそうな綺麗なソファーだったけどはらって、笑顔でどうぞって…うわーいい人だ!っていうか普通はそこまでしないと思う。
「あ、ありがとうございます…」
「お前…そういうことまでしなくていいっつってんだろうが…」
「え、何のことですか?…あ、自己紹介がまだだったよね。僕は小池大地、副会長をしてます」
「えっ、と、存じてます。お…僕は四月一日優です。まだ一年なので気とか使わないでいただいて大丈夫です」
ご丁寧に頭まで下げて名乗ってくれたから、俺も同じように返したけれど、この学園で生徒会のことを知らない人はまずいないだろう。
小池大地先輩。2年の先輩で副会長をしている、恐らく天然さんであろう方。茶色の髪にキラッとした笑顔から王子とか呼ばれているけれど、俺はこの人が生徒会で苦労しているのを知っている。というか分かる。そんな感じするもんな。
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