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病院に着き、馴れた足取りで目的の病室へ向かう。



――コンコン


目的の病室に着くと和葉がノックをした。

『……失礼』



返事はない。



――ガチャ


だがそれはいつもの事なので、和葉はそのまま扉を開けた。



「……………」

俺たちは黙ったままベットへと歩く。


――ピッ・ピッ・ピッ・ピッ


―――無機質な音が病室を木霊する





ベットに眠っているのは、一人の少女。

綺麗な顔立ちで色白でほっそりとしている。

どことなく和葉に似ている。





『起きない、か……』
「あぁ」



『ごめん、……ごめんな、未来……』


和葉は声を震わせながら、少女の手を握りながらポツポツと謝り出した。



“未来”と云うのはベットに眠る少女の名前。

本名、松本未来。




松本和葉の妹だ。



未来は入院してから目覚めることはなく、体の機能が働いているだけの状態。“植物人間”と云うやつだ。






和葉は妹の見舞いに来る度に妹に謝る。







「おい、……お前………泣いてんぞ」


『え…?』
和葉は泣いていた。


『ん……?マジだ……』

無意識の内だったみたいだ。和葉はゴシゴシと目を擦り出した。


『クソ……!止まんねぇや………』

涙は止まんねぇ様で、和葉は必死に目を擦る。

そのせいか目が赤くなり始めてやがる。





「………あんま、擦んなよ」






――――ガチャ

俺はそう言い、病室を出た。

あいつは人一倍プライドが高い。何があっても弱音を吐かず自分一人で解決させようとする。


そんな奴が涙なんて見せたい筈がねぇ……






俺はそんな事を考えながら病室の前に立っていた。
中からは和葉の泣き声が微かに聞こえてくる。

「たく、なんで俺が………」


俺は病室の前から立ち去った。




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