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〜薄桜鬼〜
日溜まりの中で[ノーマル]
「僕なら殺しちゃうなぁ」

誰かが何気なく言ったもしも話。
物騒な言葉を口にしたのはやはり沖田さんだった。

<もしも好きな女が他の男と一緒にいたら?>

「僕のものにならないなら、誰の手にも触れられないように、大切に殺しちゃう」
「総司らしいなぁ」
「確かに総司ならやりそうだ」
平助君と永倉さんが納得という顔で頷いた。女の子側としてはとても恐ろしい話である。
関係ないはずの千鶴でさえ血の気が引いてしまった。
「ん?千鶴ちゃん顔色悪いよ?別に君のことを言ってるわけじゃないのに」
「い、いいえ!!別に何でもありません!」
すぐに気づかれ、意地悪そうな顔でのぞき込まれた。
沖田さんならやってしまうーー!
「土方さんなら分かってくれますよねぇ?僕の気持ち」
「分かりたくもねぇ」
お茶をすすりながらばっさりと切り捨てる土方さん。
そんな土方さんだからきっとーー
「別に気にしないんでしょうね。なんせ鬼副長だから」
「総司...」
お茶を飲みながら斉藤さんが冷静に注意する。いつも見慣れた光景だ。
「斉藤さんはどうなんですか?」
「...俺は...」
「斉藤はあれだ。まず女といるところが想像つかねぇよ」
肩をバシバシ叩きながら笑うその横を千鶴は怖くて、とても見れなかった。
あの斉藤さんを叩くなんて!!
「いや、斉藤は以外と総司に近いかもな」
原田さんの発言に、その場の空気が一瞬凍る。
「一君が僕に?」
「えぇ〜」
「佐之、いくらなんでもそりゃないだろう」
「......」
「総司と一緒にしたら、斉藤がかわいそうだ」
千鶴も皆と同意見だった。
原田さんの予想は外れていると思う。あの斉藤さんが、非情な沖田さんに似ていーー
「千鶴ちゃんさぁ、今失礼なこと考えているでしょう?」
「!」
慌てて背筋を伸ばし、必死で首を降る。
沖田さんには驚かされてばかりだ。
「斉藤は大切な女は大切にしまっときそうだ」
「そうかなぁ〜」
土方さんの意見に平助くんは不満そうに口をとがらせた。逆に永倉さんは納得したように頷いてる。
「平助は必死で引きとめそうだよな」
「な!!それはしんぱっつぁんだろ!」
真っ赤になって怒っている様子を見ると、あり得そうな話だった。
「うふふっ」
「千鶴まで〜。笑うなよ〜」
「ふふっ、ごめんなさい」
いつの間にか、土方さんと斉藤さんの姿は消えていた。
きっと真面目なあの二人のことだから、仕事に戻ったのだ。「佐之さんはどうなんだよ〜」
「俺か?」
平助君はどうにかして自分の話から話題をそらそうと必死だ。
ふとお茶を飲むと、大分冷めてしまっていた。
そんなことも気にならないぐらい皆夢中になっていた。
「佐之は大人だからなぁ。そんなことないだろう」
「そうだなぁ。しんぱっつぁんと違って」
「こんのやろぉ〜」
「千鶴ちゃんはどうなの?」
「へ!?」
急な話の振りに思わずおかしな声を出してしまう。
「好きな男が他の女と話してたらどうするの?」
「えぇ!?」
皆の視線が集まる。平助君の首を絞める手も止まった。
「興味あるなぁ」
「だな!」
「そ、そんな!」
顔が熱い。きっと今は耳まで赤いだろう。
もしも好きな人がーーだなんて皆の前で言えるわけがない。
「俺達だけってのはずるいぜ。千鶴も話せよ」
「え、えぇ〜」
平助君まで詰め寄ってきた。
話を振った張本人、沖田さんは離れたところでにこにこ笑っている。
「何だ?」
「......」
土方さんと斉藤さんまで縁側に出てきてしまった。
さらに多くなった人前で千鶴がそんなことを言えるわけもなく、夕飯まで解放してもらえなかった。

勿論、<もしもーー>の話は皆さんにも秘密です。



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