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trick or trick/デンジ

ハロウィンの時期がやってきた。


さぁ、悪戯しに行こうか?





そろり、そろり。
物音も何もたてないように静かにナマエの後ろに回る。側にいたピカチュウは、少し耳を立て警戒の色を見せたが、相手が俺だということを確認した後はただ丸くなって眠るだけだった。


「遅いなぁ……」


待ち合わせの相手がもう既に背後に居ることを知らずに、時計を見てぼやく。
完全に油断している様子を見て俺はナマエの視界を手で遮った。
一拍置いて慌て出す彼女を見て面白がりつつ傍に置いてある鞄をそっと隠し、手を離してやる。


「すげぇ慌てよう」
「あ、デンジ!!何するのよ、驚いたじゃない!!」
「うっせ」


ナマエをからかっていると、暫くしてやっと気付いたのか、今度は鞄がない!とまた慌てだした。
いちいち反応に飽きないな、なんて笑っていると俺を睨みつけてくる。気付くのが遅いと言えばうるさいと返ってきた。


「鞄。返してよ」
「やだ」
「こんのガキぃぃ……」
「同年齢だろガキ」


心底恨めしそうに呻く彼女を一通り笑った後、本日本命の一言を口に出す。
勿論、意図せずを装い思い出した風に。



「あ、そうだ」
「何よもう」
「トリック オア トリート」
「ざまぁ。言うと思ってクッキーをだね………」

「…………」

「………鞄に入れてあるんだけど……」


自信満々な様子が一気に萎んでいく。


「ざまぁ」


悪戯を選ぶしかないよな。

恐らく最高にしたり顔だろう俺は、ナマエを担いで自分の家へ向かった。


「あんた最初からこのつもりだったのね」
「さぁな」


最後の抵抗、と腰辺りを蹴ってくるのが案外痛くて、お返しだとばかりにキスをする。
すぐに黙っておとなしくなったので、そのままお持ち帰りした。

……いやぁ、悪戯って楽しい。

来年はどうしようか、なんてもう先の事を考えている俺はこれでも結構浮かれているんだと思う。
だってさ、やっぱお前が居るとどんなイベントだって楽しめるから。

ありがと。

そう呟けば、ナマエは少し照れくさそうに笑った。

ハッピーハロウィン。

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