その一瞬で/ハヤト 「ピジョット、いくよ!!」 その声に、俺は先客が居ると気付いた。 いつものように修行しようと向かった草原には、人が一人、そしてポケモン…ピジョット、と今言っていたか?のシルエットが見える。 ………ピジョット、か。 最終進化系であるそのポケモンにかなり興味を唆られて人影の方へ近づいていく。 鳥、飛行ポケモンが大好きである俺にとってはかなり惹かれるものがあった。 「先ずはこうそくいどう!それからコットンガード、羽根を散らして遅めのたつまきで巻き上げて!」 コットンガード? 聞きなれない技名に戸惑っていると、トレーナーが戸惑っているのに気付いたのか、羽根を綿のようにして防御力を上げるんだよ、と説明してくれた。というか俺の存在に気付いてたのか。ビックリした。 「ピジョッ」 「うん!そのまま、たつまきに向かって…エアスラッシュ!!」 「……っ」 そして、目の前の光景に息を飲んだ。 すごい、きれいだ。 そんなありきたりな感想しか浮かばないくらい、感動していた。 コットンガードとやらによるふわふわとした羽と、それを巻き上げる竜巻…それもスピードが抑えられていてとても緩やかで、とても綺麗で。エアスラッシュで切り裂かれた風とともに羽が一面に広がって。 …何より、楽しそうに笑う彼女の横顔が美しくて。 その一瞬で あぁ、恋に落ちるってこういうことか。 納得してしまった次の瞬間どうも恥ずかしくなり、名前も聞かずにその場を走り去ってひまった。 次の日、キキョウジムにたまたま挑戦しにきた時にやっとナマエという名前を知るのであった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |