迷子/ノボリ
「まよっ…た…」
絶賛、迷子中。
友達とバトルサブウェイ、という所に来てみたはいいが…はぐれてしまった。
電波が悪く“マルチトレイン”で待ってる、と途切れ途切れに聞こえてきたポケギアはもううんともすんとも言わない。心細い。
かなり方向音痴な私は地図を見ても全く場所が分からないし、鉄道員も皆出払っているっぽい…お昼でかなり混んでいるから。
「うわっ、と」
人混みに揉まれながらどうしたものかと悩んでいると、人にぶつかってしまった。
謝ろうとその人の方を向くと、
「す、すいません!前を見ていなかっ、た、ので、」
「ああいえ、私も立ち止まっていたのがいけないのです。お気になさらず」
「………」
どうも相手も何やら言っているようだが、耳に入らなかった。
何故って、かなりの美形で。
「どうかされましたか?」
どうやら硬直した私を見て不審に思ったのか、彼は私の顔を覗きこんできた。
ああああ、近い、近いです!
「あ、あの、道に迷ってしまって」
「おや、そうでしたか。それならば私が案内いたしましょう」
何処へ行かれますか?と聞いてくる彼はどうやらノボリ、さんという名前らしい。
マルチトレインのホームに着くと、また困った事があればおっしゃってくださいまし、となんとも紳士的な言葉を残して何処かへ行ってしまった。
「かっこよかったなぁ…」
「はいはい、それはいいからバトルに集中してよね〜」
惚ける私を嗜める友人を小突きながら、私達はマルチトレインを順調に勝ち進んでいった。
迷子
「えええええええ!?」
「またお会いしましたねナマエ様」
「ナマエ…ってもしかしてノボリの言ってたかわいい迷子ちゃん?」
「はぁ!?さっき言ってたかっこいい人ってサブウェイマスターだったの!?」
「それ言っちゃだめぇぇぇえ!!!」
「くくくクダリなんて事を!!!」
「ノボリ、にんきもの」
「ナマエ、あんたも女だったのね…」
まさか、ノボリさんがサブウェイマスターだったなんて。
勝負中に私もノボリさんも使い物にならなかったのは言うまでもない。
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