クールな彼女?/グリーン
「アホらしいな」
小説から目を依然として離さないナマエはやっと口を開いた。と思えばこれだ。アホらしい。
毎度の事とはいえ傷付かない訳でもないから少しくらいオブラートに包んでくれても、と思うが、それを言っても何ら変わらないだろう。
遡って、15分前。
「相談がある」
「……」
話してみろ、とばかりに器用に片眉を上げるナマエ。いつも偉そうだ。
かなり偉そうなのでこの前、一体お前は何様だと聞いたら神様だと返された。
その後冗談だとボソッと言っていたが、イマイチ冗談に聞こえなかった。むしろ納得できた。本人には言わないが。
「久しぶりにシロガネ山に行くんだけど」
「………」
「ポケモン貸してくれよ」
そうして最初のやりとりに戻る。
「アホらしいとか言うなよ。な、貸して」
「却下だ」
この俺が両手を合わせてねだっているというのに。大体の女子ならオチるってのに…
「なんで」
「理由はさっき言ったろう。アホらしいからだ」
「っ….何がアホらしいんだよ!」
あ、しまった。
ついムキになって。これは、ヤバイ。
…ナマエの、
「…………すぅ……」
息を大きく吸い込む音がする。
失敗した。俺はその場に正座した。
さぁ、お叱りタイムだ。
「わざわざ私の手持ちを借りていく理由だがおそらくレッドを外に出すためのエサにでもするつもりだろう この地方には居ないからな それはまだいいとしてまず貸してくれとだけ言って用途を言わない辺りからもう私に貸すという選択肢は無いといっていいだろう なんだ?私を連れて行きたくないからか?くだらないな だからお前はレッドに負けてばかりなんだ いつになったらもっと大人になるんだまったく いつまでもそんなだからオオキドの息子()とか言われていじられるんだよ聞いてるのかボンジュール野郎」
「ボンジュール野郎言うなし…」
「昔は…今もか?言っていたじゃないか」
ちゃ、っと二本の指で真似をしてみせるナマエ。
もう言ってないし忘れたい。
というか忘れてくれ。
そして全て的を射ていて心が抉られた。
言い返す事が出来す、正座したまま頭を地面につけた。どうせ家だし。そういう問題でもないと思うが、もうどうにでもなれ。
「はぁ…」
ため息が上の方から聞こえる。
やめてくれ。これ以上傷付きたくない。
俺グレちゃうから。
と、半ばスネながら正座したままで居ると、
「ほら、これを」
コツン、と頭に何か硬いものが当たった。
「キチンと返せよ。中はジャローダとシャンデラが入ってる」
「ナマエ、」
「まったく…甘やかすのも大概にしないとなぁ…」
あ、なんか泣きそう。
というか少し涙目になっていると、ナマエが頭を撫でてくれた。
何これ、嬉しい。
そして男らしい。惚れそう。
「ありがと」
「…ん」
もう用は済んだろう、と言って彼女はまた小説を読み始めてしまった。
あああ、男前。女だったら確実に惚れてる。
「俺、お前の事好きだわ」
なんとなく口に出した言葉。
「そうだろうな」
やはり小説からは目を離さずに、しかしナマエはふっ、と柔らかく微笑んでみせた。
あぁ、やっぱり生まれてくる性別間違えたんじゃないか、俺はそんな事を考えながら帰った。
でも俺が女でナマエが男。
あんまし考えらんねぇな。
クールな彼女
(「だってあいつ可愛いし」)
その頃、ナマエは。
「私も好きだ馬鹿」
顔を真っ赤にしながら小説を抱えて体育座りをしていた。
照れてる所は見せたくないクール系(?)
そして実は知ってるグリーンくん。
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