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アリス小説
安息の束縛1

此処には安心感がある
引き止めて
縛り付けて
繋ぎ止めようとする
その手に
その目に
その声に
抗いきれずに
此処にいるのだという安心感。

このまま、そのまま、押し込めて離さないと言い続けて。

遊園地にあふれる色々な音が心地よい場所。
まどろみながら、その音の中、そんな安心感に浸っていた。
そのはずだった。


「・・・・ここ・・何処・・・・?」

呆然と空を見上げて、梢がこすれあう音を聞木ながら、ただ、驚きの声を零すしかない。

機械の音
笑い混じりの悲鳴
そんなものが常に当たり前の場所に居たはずだった。
そのはずなのに、気がつけば、そんな音は何処にもなくて、それに違和感を感じて目を開けてみれば、天井は無く、周りは木々ばかり。
空は晴れやかに昼を主張していた。

「え・・?えぇ??」

慌てふためくのと同時に、半身を起こし、周りを見渡した。

ボリス?ボリス!?
声にならずに、心の中で叫ぶ名前。

彼がいない。
何処にもいない?
不安感が押し寄せて、パニックになりかける。
此処は何処?
まだ、あの不思議な世界??
森と空だけでは分からない。

「女の子だ・・」

不安で不安で、動くこともできないところに、声がした。
無邪気で、陽気で、バカそうな・・いや、じゃなく、聞いたことが無い人の声。
うん。
別におバカな空気がしたなんて、思ってないわ。うんうん
取り合えず、相手に私のモノローグなんて聞こえているはずが無いので、普通に振り返る。
本当に、何も考えずに。

「・・・・・・」
「女の子落し物?」

緑の服に、かわいらしい帽子がよくにあっている。
かわいい感じの・・えっと・・何?
今までずっと近くに居た人は、まぁ、人じゃないんだけど・・その人は、猫だった。
しかも、ドッピンクの猫。
あんな強烈なものに慣れてしまったんだし、たいていのものには驚かないと思っていたんだけど。
うん無理だわ。
人間できることとできないことがある。
やっぱり、初めて遭遇する生命体に、対応できるはずも無い。
パニックというわけでもないけど・・何と言うか、このファンシーな獣耳に対する戸惑いは致し方ない・・わよね?

「・・・えっと・・・クマ・・・・?」
「くっ・・クマ!?何処!!??くまどこ!!!????」

ビクビクブルブル周りをキョロキョロと見渡すその反応に、あ、違うのかと、冷静に見つめる。
じゃぁ、何?この子。

「っは・・もしかして、僕?僕のこと??」
「・・違う・・みたいね。」
「ひどい。ひどいよ!何処がクマなの!?こんな立派なお耳と尻尾の何処が!!」

何か、とってもテンションが高い。
ほらほらと見せられた尻尾。
さすがにクマはこんな尻尾してないわね。
なるほど、と思い、また考える。
相手がテンション高い分、さめていく自分がいるのが分かる。

「う〜ん・・・あ、猫!」

長い尻尾から連想したのはそれだった。
よくよく考えれば、単に、身近すぎてそれしか出てこなかったのかもしれないけど。

「ね・・・ネコ!!!!!」

あれ?クマの時以上のショックをうけたっぽい?どうして??

「ねねねねねねねこだなんて!!!!!」

慌てふためくというよりも、何だろう、恐怖のどん底?にでも落とされたかのような顔色。
もしかして、地雷だったかしら。
ぼんやり眺めていると、緑の服の結局何の動物だか分からない相手の背後に見慣れたものがぬっと現れた。

「ピーアースー」
「・・ぴぃっ・・!!!!!」

低いトーンだけれど、とても楽しそうな声。

「ずいぶんと、楽しそうだなぁ。」

にんまり笑う顔は、格好のおもちゃを見つけた猫そのもの。
というか、猫耳に猫の尻尾の立派な猫だから、何となく御幣はあるのよね。
でも、他の言い方なんて分からないわよ?

「ぼぼぼぼぼぼぼぼりぼり・・・」
「なぁに変な擬音口にしてんの?」
「ぼ・・・」
「ボリス!!」
「わっ・・・!!?」

ぼんやりと見ていたけれど、ふと、意識が覚醒した。やっと不安から開放された。
そんな気持ちが広がって、一気に溢れ出す感じ。

あなたの束縛が必要。

改めて、それを思い知らされる。

その束縛が、私を癒す唯一・・




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あきゅろす。
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