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須く知る月の如く(マイアイ)
変わる彼をその目は見ている








叩く
叩く
窓を叩く


それは水の小さな塊
雨と
人が名付けたもの

存在一つ一つに

理解と
支配を

世界に
求めて
付けられたそれ


叩く
叩く
その音が


雨の音じゃないことを知っている
知っているんだよ

マイセンは
聞こえてないのかな?



カツカツカツカツ

木の板と、靴がぶつかる音がする。
少しだけいつもより早いなぁ。
人は気分によってそういうのが変わるんだって、あの女が言ってたっけ。
どうでもいいけどね。

マイセンの靴の音。
マイセンの気配。
部屋の前で緩まって、木の板でできた出入り口が開く。

ガチャリ

金具の音。
部屋に入ってきたマイセンは、全体を見て、首を捻った。

「あれ?」

「おかえり!マイセン」

目をしぱしぱさせながら、僕をちょっと見て、部屋を見渡してる。
瞬きを繰り返すときは、何か予想外の事があった時。
この部屋に驚くことなんて何もないと思うんだけどな。
そう思ってじっとマイセンを見つめてると、また、マイセンが僕を見た。

「プリンセスは出かけたのか?」

「うん。」

「いつからいない?」

「確か、雨が降る直前だったかなぁ。」

どうでも良いから結構適当にしか覚えてないや。
でも、雨は降ってなかった。
雨が降るどれくらい前かなんて知らないから、適当に答えておく。
だって、どっちにしたってきっと降られて濡れてるし。
水の粒が窓を叩き始めた時間、一気に大きい音したから、どばって降り始めたと思うし。

「なっ・・じゃぁ、今頃びしょ濡れじゃないのか!?」

「・・さぁ?」

マイセンの声が焦ってる・・?
それが不思議で首をかしげた。
何か焦るようなこと、あった?
また、あの女の事かな。
僕には良くわかんないや。

「ちょっと出てくる。バスタオル二つ用意して部屋あっためて待ってろ。いいな」

ばばっとそれだけ言って、マイセンはかさを一本だけ持って走って出てった。

「あ・・外出たら、マイセンまで濡れちゃうのに。」

何か、あの女だけなら良いけど、マイセンがびしょ濡れになったらやだなぁ。
人間って弱いんだよ?
風邪ってやつをひくんだよ?
あの女がなったところで、苦しがったりしても別に構わないけどさ。
まぁ、マイセンが苦しがるの、別に嫌いじゃないんだけど。
でも、意識が朦朧としたり・・?
するらしいし。
そしたら、僕が何をしたらいいのか、マイセンが何も考えられなくなるかもしれないのに。
それは困るんだよ。
困るし、やだなぁ。
本当にやだなぁ。
あの女がいなきゃそんなことにきっとならないのに。
でも、あの女がいなきゃ、あの音も鳴らない。

言われたとおり用意したタオル。
とりあえずストーブをつける。
後は何が必要か良くわからないから又ぼんやりとソファーに座る。

窓からあの音に良く似た音がする。

叩く音が聞こえてる。

少しずつ変わる音。

外からじゃない。
内側からだよね。

あの音をどこかで聞いたことがある。
そう、鳥の雛が、殻を中から破る音。
叩く音。
叩く鼓動。
強くなる、それ。

ほら、今

殻の中身が外に出ようと、小さくもがき始めた。







++++++++++++++++++++
なぜかミハ視点。
書くつもりはなかった。
がしかし、ミハ視点が一番なんか、わかりやすい気がしてならない・・かも。
もっと陰鬱な感じの雨・・降らないかなぁと、これの続きを書くときにおもってしまう。










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