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闇の影たる月の章


※相変わらずの雑記。
 暗いので注意
 死ネタでもあるので注意



 ようやく来ましたエンド3
 6話目から分岐其の2でもあります。


 注意事項をよく読んでお進みください。













 どうか生きて欲しい

 あんたが生きるなら
 俺は嬉しい

 やっぱさ
 王子様だし?
 一回くらい愛しい姫を

 助けに行かなきゃ

 嘘だろう?



 この愛情が嘘だとしたら

  俺はもう
   生きてけないから


 例え誓いを

 破るとしても・・



王宮の一室、プリンセスのいる寝室のすぐ外にミハは降り立った。そこからスルリ。
降りると、ゆっくりとプリンセスの部屋へと足を踏み入れた。
彼女の香りが優しく広がる。
懐かしいと感じるのと同時に、悲しくなる香り。
死をまとって、広がっている。
その部屋の主のもとへたどり着くと、そっと、花をその髪にさした。

「よく似合う。」

笑っても、笑い返される事などないと知っていながら微笑みかける。
「もう、今しかないな。」

彼女の死は、すぐそこ。

「会いに来たぜ。プリンセス」

愛しいお姫様。

「助けに・・来てやったよ。」

俺は王子様だからさ。
ゆっくりと、優しく、その前髪を梳いて、笑う。

「愛してる。」

寝てる時しかいえない弱虫でも。
今、この瞬間しか言えないからさ。
届かない物を、届けにきたぜ。
ゆっくりと、その体を抱き起こす。

「この国の月のような人。もし、照らす者が無いなら代わりに照らしてやるよ。だから、何があっても、アイリーンのままでいろよ。」

俺の背後で静かに見守っていたミハが、すっと、扉へ歩き出す。
コツリコツリと規則的な足音から、ちょっとむっとしたようなそんなあいつの機嫌の悪さを感じた。

「邪魔者は、どうすればいいの?」
「ん〜まぁ、とりあえずこっちこないように押さえといてくれ。」
「わかった。」

俺にはわからない気配を、ミハは感じたらしい。
その後姿を、視界に入れるともなしに、上半身だけ起こしたプリンセスの体を抱きしめる。
暖かくて、それが悲しい。
もし、もっと近くに、もっと早く、よる事ができていたら・・・
詮無い事を考える。
意味はない。
俺がこの隣にいても、今を変えることはできなかったはずだ。
ミハが無造作に扉を開くと、何か、刃物のようなものがその隙間からミハを狙って飛び出して来た。
俗に暗器とよばれるそれら。
難なく避けて、大きく扉を開け放てば、赤い髪の・・プリンセスが思う相手がそこに。
すごーく嫌な気分だ。
でも、これが最後になる。
だから、ちょっと位嫌がらせしたってかまわないよな。

「ミハー、そいつ、そのまま床に押さえつけといてくれ。」
「わかったよマイセン。」

言うが早いか、ミハは俺の言ったように、そのままあいつの体を押さえつけた。
きっとその動きが目で追えなかったんだろうな。
驚いた顔しているもんな。

「・・っく・・!あなた方、以前もこの国に・・」
「お、よく覚えてんじゃん。」
「えぇ、そりゃ、覚えてないはずが無いでしょう。」

すごい力で抑えられてる筈なのに、まぁ、平然とした顔で話すもんだ。
そう思いつつ、抱きしめたその人のこめかみ付近を撫で、ゆっくりと呼吸する。
失敗すれば諸共に・・
成功しても・・・・

「何する気ですか!」
「・・・ミハ・・・」
「黙ってなよ。」
「っぐ・・」

なぁ、シモン。
俺はずるいんだ。
今からお前を、利用する。
ごめんな。
だって、好きなんだ。
好きになった。
きっと、君がいたからだ。
シモン・・君がいて、でも、アイリーンだったから、好きになった。
頼むから、どうか、彼女の生だけは脅かさないで。
ゆっくりと、でも確実に、この身にある力を注いで。
願いをこめる。
戻っておいで。
君は、君として、その生を全うするべきだ。
それが、彼女の望みでもあるよ。
シモン・・わかるだろ。
ローレイのことなんだから、理解できる・・そうだろ。
どの位の間か、一瞬だったか、数分だったか、わからなくなる程の魔力の渦の中、カーティスは目を見開いたまま、寝台の上の愛しい人を見つめ続けた。
ゆっくりと、その力が薄れはじめる頃、固く結ばれていた少女のまぶたがふるりと震え、その瞳を覗かせた。

「アイリーン・・!」
「・・・・・」

ミハエルに押さえつけられた苦しい体勢の中、カーティスは声を絞り出す。
もう目覚めないかもしれないと、恐怖し続ける夜を過ごしてきた。
その要因たる彼女の存在の揺らぎが消えた。
それに対する歓喜と、安堵と、言い知れぬ他の感情に、唇が震えた。

「・・・マイ・・セン・・・?」

少女は、目の前の顔に、静かに疑問を浮かべる。
頭ははっきりしないが、何か、大それた事が起こった事には気がついていた。
何かがあった。
何か、恐ろしい事。

「おはよう。寝ぼすけなお姫様。」

ニコリ笑うその顔色はとても悪い。
精も魂も尽きはて、マイセンは正に・・その命を落とそうとしていた。

「どうして・・」

声が震えた。
彼には、叶えたいものがあったはずだ。
探している人がいて、漱ぎたい業が在って・・。

「こんな事、してる場合じゃないじゃない。あんた・・死んだら全部、とられてしまうのに」

転生が許されない。
ミハエルとの契約って、そういうことでしょう?と、彼女はその顔を青くしている。
ずっと、疑ってたくせになぁと、苦笑しつつも、聡い彼女が俺らの本気と冗談を、見抜いていないはずがない。
それに思い至ったマイセンは、弱弱しく喉の奥で笑った。
笑いながらその背を丸め、半ば、アイリーンにもたれるように、その耳元に唇を寄せた。

「・・でも、この契約には穴がある。」
「・・?」
「俺の中の一部は、あいつに還る。俺の欠片は、世界にまだ、残る事ができるようになっている。ミハが手に入れられるのは、この空っぽな器と、ちっぽけな欠片になった魂だけだ。」

悪魔にさえ、唾を吐く。
彼女のための旅だったのになぁ・・何故俺は、終わりを此処に決めてしまったのか・・。
考えたって意味はない。
そうしたかった。
それだけだからな。

「マイセ・・」

カタカタと、腕の中の細い体が震えている。
あぁ・・もう・・目の前が・・。

「じゃな、プリンセス。もう、無茶したら・・だめ・・だ・・・・ぜ・・?」

落ちていくのは一瞬だ。
そしてきっと、あの子も苦しむ。
あぁ、でも、元の持ち主だもんな。
こんなに苦しまないよな。

力なく崩れる体躯。
泣きそうな目でそれをきっと追っかけた。
でも、その体が崩れきってしまう前に、いつもワンセットのように一緒にいる真っ黒な服に身を包んだ悪魔が、その上体をキャッチした。

「おやすみ。マイセン」

嬉しそうに刻まれた口元。
あぁ・・もう、いないんだ。
苦しかった。
ただただ苦しくて、何もいえない。

そんな光景を、カーティスは苦々しげに見つめる事しかできなかった。
突然消えた圧迫感の代わりに、忌々しく見つめていた男の背を、それは支えて立っていた。
そうして、アイリーンが起き上がって手を伸ばすよりも早く・・ミハエルはマイセンを担いで、テラスに・・。

「あーあ・・君の所為で、僕の取り分が殆どない。」
「どういう・・」
「わかるでしょ。そこに、分けられちゃったんだって。」

月を背に、翼が広がる。
バイバイ
声無く男は唇を振るわせた。

「・・マイセ・・」
「アイリーン!」

あっという間の出来事。
アイリーンの双眸が開き、マイセンが崩れ、ミハエルがその体を持って姿を消すまで・・本当にあっという間の事だった。
そうして、二人きりの部屋、カーティスは愛しい人に駆け寄ったのだった。

「大丈夫ですか?体の調子は・・」

その肩に触れると、震えを感じた。
顔を覗き込めば、その頬は涙でぬれている。

「アイリーン・・」
「ごめんなさい。涙が、止まらな・・」

グスグスと、そのまま蹲った。
胸の内に、自分を照らすものを感じている。
それは、マイセンの一部だったもの。
闇に飲み込まれないように。
彼女を押し込めるために。
とても、胸が痛いの。
痛くて痛くて、苦しいの。
だってもう、マイセンはいない。
此処に欠片が残っているだけ。
そうして彼は、望みの一部を得た。
永遠に手に入らない恋心の変わりに、彼女の心の奥深くに、存在し続ける痛みになって。

「きっと、私、マイセンを忘れない。ごめんねカーティス。約束・・守れなかったみたい。」

一番愛しているのは暗殺者。
私を捕まえてしまったのは高利貸し。

 もう誰にも恋ができない。

だって、心をカーティスに預けてしまった。
胸の奥深く消えない傷がずっと痛み続ける。
二つの想いで、私は生かされていくから。
嗚咽の止まらないアイリーンを、カーティスは優しく抱きしめた。

「約束なんていりません。ただ、此処で、傍で、貴女がいるなら」

その優しい声音に、更に涙が止まらなくなった。
我慢できずに、アイリーンはその胸にしがみ付く様にして、声を上げて泣いた。








胸の内には光が一つ。

生きる限り照らす星。

私は貴方に生かされた月。

泣いてもいいですか。

この痛みが苦しい間は。

この苦しみに耐えられない間は。

貴方が死んで、私は貴方を手に入れて、私は私を失った。

これは、そういうことでしょう?

悲しいよ。
苦しいよ。
でも、嬉しいと思う私がいる。


それはきっと、裏切りの月・・









(二人の言葉は)

(その一方しか)

(現実となることを許されなかった)






 それでも・・

 貴女が他に
 心うつろう日が
 あろうとも

 僕は心を
 変えないでしょう


 唯一愛しいただ一人・・

 -----月の章 END

全てが見事にデットエンド。
すみません。これを私はマイアイEDと言い張ります。
そして、色々捏造すみません。

いまいちマイセンについては私理解していません。

それにしても、此処まで見事に救いの無い話なのに、エンディング三つあるとか、何の挑戦でしょうね。自分

いやいや、これをよんでくれた人こそ、チャレンジャーですね。
ありがとうございます。
ここまで書いておいて、結局どれも報われない系で、淡い期待(した人いるの??)など、粉砕ですね。

さてはて、一応補足的な感じで、お話を作るにあたっての私の中で引いた芯でもつらつらと・・

前提:必ず死ネタで終わらせる。下手にハッピーエンドとか全部事も無し的な方向は嫌だったので貫いてみた。需要?そんなものは知らない。ww

非日常:極限で無いと感じない事ってあるよね的な。そんな心情を吐露させてみたかったので、色々粘ってみた。「最初で最後じゃなくて良い」っていうのは、死ぬ事前提の気持ちだからだと思うんだ。死んだ後の事は知らんけど、幸せを願いたいじゃない。

星と月:これは、マイセンの行動で間逆にしたくて。色んな事が間逆になればいいなと思いつつ、難しかった・・orz

星:星は星でも、恒星のイメージで。リセットすることでまた自分で輝きだすみたいな。でも、そこにはカーティスの自己犠牲という影が人知れずあったり。ギルカタールそのもののような何か仄暗さがあったらよかったのに。。。

月:自分で輝けない=自分だけでは命を繋げられなかったアイリーンに見立ててみたり。こっちは、マイセンによって寿命が来るまで生き続けるんだろうなと思います。マイセンってずるい人だよね。

闇:光と影を飲み込むくらいの存在=女神的な。じわじわとアイリーンを飲み込んで、最後は体をのっとります。『普通』を捨ててしまったので、制約が無くなって、人では在れなくなったみたいなイメージ。


以下ゲームのネタばれ的な感じかもですが、これを書くに当たっての私の認識




業:マイセンは、妹が人になるために負ってる制約みたいなものと、魔力を肩代わりしてるんだよね?という認識。アイリーンは『普通になりたい』という気持ちが、女神を抑えるリミッター。

女神:マイセンは別に生まれ変わりではない。・・と解釈(肩代わりしてるだけだから?みたいな)

似てるけど違う:業と魔力はローレイのだけど、マイセンは生まれ変わりじゃないから、シモンは違うと断言した感じ。

悪魔と制御:大きすぎる魔力をミハが食べてるなら、魔法使う時の制御にもなるのかなという勝手な解釈。よし、元気な捏造だ!


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