[通常モード] [URL送信]
闇の影たる月と星 2

※相変わらずの雑記。
 暗いので注意
 死ネタでもあるので注意














 その恋は
 そのプリンセスを
 死に
 誘う

 それを・・

 俺は
 止める事も出来ない



終わった賭けは、プリンセスの勝利という形で幕を閉じた。
それだけを見届けると、俺はあの砂漠の国を、静かに後にした。彼女には何も言わず。
もう、二度と、出会うことのないお姫様。
きっと次に出会う時には・・

考えたくもないそれは、言いようのない絶望感と、喪失を、俺に与える。
さようなら。
胸の中で、永久の別れを捧げた。




気がつかないうちに、客用の部屋を占拠していた、あの迷惑な二人組は消えていた。

『あいつはやめておけ』

悲痛な声が、今でも耳にこびりついたまま。
その意味を、本当はどこかで知っていた。

カーティスだけは・・

その意味は明白だった。
カーティスは、他の候補者の誰よりも、闇に傾き過ぎているのだ。
それは、意図せず、私を追い立ててしまう事に気がついたのは、賭けが終わってずっとずっと後のこと。
今の私には、わかりようの無い位・・先の話。



「どうかしましたか・・?」

仕事が終わって、カーティスが心配そうに私をのぞきこんできた。
どうもしないわ。と、笑って見せるが、曇った顔は晴れることなく、私の手をとって、口づけを落とす。

「どうもしなかったら、そんな顔、していないですよね。誰かに嫌がらせでもされたんですね。」

断言する口調に、困って、視線をめぐらせる。
そんな事ないとは言えなかった。
別に、嫌がらせされたとかではないが、国を動かすのはなかなかに大変なことで、衝突はいたしかたないことだった。
何より、自分は他の昔からの重臣からすれば、ただの小娘。
しかし、そんな事はカーティスにはどうでもいいこと。
ただ、アイリーンが困らされている。
其の一点が重要な事。
ならばと、不意に笑顔を作り、カーティスは立ち上がった。

「ちょっと出かけてきます。」
「どこに!」

嫌な予感・・というよりも、カーティスの全身から、ちょっと殺ってきます。という空気が出されているのを見て、ばっと、服の裾をつかんだ。

「だめよ。殺したりとか、やめてよね。」
「おやわかってしまいましたか。」
「ばればれじゃない!」

にこやかさはそのままに、彼は、殺る気満々の笑みをたたえている。
グイッと裾を引っ張り、こっちにきてと、促せば、彼は大人しくアイリーンの横に座った。

「そんなことしないで頂戴。」
「だめですか?」
「してほしくないのよ。私のせいでそんなこと・・」
「・・わかりました。」

頷くのを見届けて、アイリーンはほっと息を吐いた。
良かった。
そう思ったのもつかの間で、その後の執務をいつも通りこなし、眠りにつき、次の日・・アイリーンは違和感に気がついてしまった。
今まで強固に意見を通し、ねちねちを嫌味を言っていたメンバーが、今日に限っては大人しい。
うすら寒いそれに、アイリーンはすぐにぴんときてしまった。
そんなものに、気がつかない性分ならばよかった。
なのに、あぁ、目の前には苦い現実。

自分の一挙一動が、せっかく暗殺者をやめたカーティスに、そういう事をさせてしまう。

苦く重いそれは、胸に凝る。

私が苦しむ事で、せっかく暗殺業をやめたカーティスが・・

彼にとっては何とでもない事。
けれど、それがどうだというのか。
カーティスにとって何ほどでもないというものでも、アイリーンにとっては、我慢のならない事なのだから、それは、砂一粒分たりとも、彼女に救いはもたらさないのだ。
自分が苦しむ事、それが、彼を夜の闇にまた落とす。

なら、どうすればいいか・・私はきっと、知っている。

「・・・・・貴方たち、今日はやけに静かね?」

暗い笑みを浮かべると、冷や汗を浮かべたそのメンバーは、ごにょごにょと、支離滅裂な理由を述べる。
それを、面白くも無いのに、アイリーンは笑みを深くし、眺めた。








[*前へ][次へ#]

2/9ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!