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朱無き世界で(カティアイ)


この空が続く限り。
この心がある限り。

多分、自分は変わらないでいられる。

変わらないままでいる限り、きっとずっと、私はこうして抗い続けるのだと、信じて疑わない。



「ご主人様、そろそろ寝る場所を探した方がよさそうですわ。」
「うん。じゃあ、まきになりそうなもの集めるから、場所はチェイカお願いね。」
「はい」

旅の途中、アイリーンはチェイカと二人で野営の準備を始める。
国を出てどれくらい経ったか・・。
どうしても諦められない想いのために、アイリーンは国を出た。
どうすれば、あの両親を納得させられるだろう?
追っ手をまきつつそればかり考えていた。
賭けでは負けてしまった。
でも、何かしらの力を示せば、ちゃんと自分の力で生きていけると示せれば、こんな風にこそこそと逃げずともいいはず。

「流石に龍を倒すとかは無理ですしねぇ。」

野宿の準備を終え、腰を落ち着けたところで、今後の話をチェイカとしていた。
流石にあまり現実離れしたことはできない。
ただ、自分の力で生きていけると証明できればいいのだ。
いいのだけれど・・それがまた難しい。

「私のできることって言ったら・・盗賊の各種技と、多少の戦闘位よね」
「あ、後、魔力がありますわ。」
「う・・・ありすぎて、どうにもならないけど・・ね。」

アイリーンは肩を落とした。
う〜結局自分って、できること殆どないじゃない〜と、胸の中で呟く。
が、チェイカは、それだけ特殊技能があるのだから、結構色々できると思うのだけど・・と、自分の主人を眺めていた。
だいたい、たいていの女の子だったら、こんな旅、10日と持たないはずだ。
襲撃者から身を隠し、時には撃退し、常に気を張ってなければならないから、神経も磨り減る。
が、プリンセスは心身ともに健康だ。
流石はギルカタールの姫といったところか・・。

「いっそ、どこかの学校に入って、魔法の勉強でもできれば、活用もできますのに・・」

ギルカタールには、それほど魔法に精通した者がいない。
基本的なところは抑えられてはいるが・・結局のところ、盗賊としてのスキルの一つとしてでしか活用されないのだ。

「でも、入学って言っても・・ちょっと難しいかも。」
「ですわね。」

火を囲む二人は、今日もお手上げといった体でとりあえず寝ることにした。
毛布に包まって地べたで寝る。
昔、何かの訓練だか何だかで、砂漠で一昼夜過ごしたことがあるが、あの時の死にそうな感じと違って、安心感がある。
それだけで、寝心地は悪くないとアイリーンには思える。
その代わり、木々が多く、気配を読みづらいのが難点だ。
そんな事を思いながら、するりと眠りに落ちていく意識の端で、何かが引っかかった。

「・・・・?」
「・・・・」

ちいさなちいさな呟きが漏れそうになったがチェイカの顔を見て、その呟きを飲み込んだ。
思い違いでも、気のせいでもなく、何かがいる。
チェイカの少し警戒するような様子に、そう確信を持つ。

「・・・」
「・・・」

どちらも黙ったまま考える。
これは、野党の類ではない。
ここまで気配が読めないなど、そうあるはずも無いのだから。
だからこれは、きっと、ギルカタールからの追っ手。
手元の剣を、そっと抱き寄せて毛布の下でいつでも抜ける準備をする。
不自然な音は何も無い。
ただ、森のざわめきと、焚き火のはぜる音が、耳に障る。

「こんばんは。プリンセス」
「!!」

突然わいて出たようなその声に、ビクリと肩が震えた。
聞き覚えのある声。
どこから聞こえたのか、どこにいるのか、気配など一切無い相手。

「・・・カー・・ティス・・・」

ゆっくり起き上がると、火をはさんで反対側、闇の中から浮き上がるように、彼は現れた。

「お久しぶりですね。」

にっこり笑うその顔は、ただひたすら不穏。
いつも何を考えてるのか分からない、笑っていない笑み。
少しだけ、絶望的な気分になる。

カーティスと離れたくなくて。
カーティス以外と婚約したくなくて。
もう一度近くにいける自分になりたくて。

そうしてここに、自分はいるのに。

闇の中で、彼が笑う。
静かに佇んで、笑っている。
最初の頃の、よく分からない笑みで。

変わらない心が、嘆きを叫ぶ。
何で、ここに居るのが、その人なんだろう・・。



******************
こんな時ばかり続いてます。
そういえば、タイトルよく考えたら凄く読みにくい気がしました。(今更
「朱なき世界で」で、「アケナキセカイデ」とよみます。
常用しない読み方に振り仮名をつけるべきか・・たまに悩みます。
でも、平仮名・カタカナ表記だとわけ分からんタイトルになりますね・・。




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あきゅろす。
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