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詰め込み部屋
君の愛《九十》裏僕
裏僕より九十九君と十瑚ちゃん。





「夕月、ちょっといい??」

「九十九くん。どうしたの??」

もうそろそろ寝ようかという夜中、ルカも一緒にくつろいでいた時のこと。不意に九十九くんが部屋を訪ねてきた。
来訪に問題はないけど、時間が少し遅い。何かあったのかと心配になってしまう。

「ちょっと相談。十瑚ちゃんのことで」

口調からして、切羽詰まった問題ではないようだ。それならと、部屋に招き入れ椅子の代わりにベッドを勧める。

「で、十瑚ちゃんがどうしたの??」

「うん…」

普段から口数は多くないが、言い淀むことはない九十九くん。そんな彼が一度相槌を打っただけで、先を続けようとしない。どうしたのかと見つめていると、九十九くんはチラリとルカを見遣った。

ああ。

十瑚ちゃんはルカを慕っている。その十瑚ちゃんの話にルカを同席させるのは些か配慮に欠ける。

「ごめんルカ、少し…」

「ああ、今日はもう部屋に戻ろう」

悪魔なのによく気が利いて優しいルカは九十九くんの様子を見て察したようで、僕が声をかけた時はもう立ち上がるところだった。

「分かった、おやすみ」

「ルカ、ごめんね」

首を一度だけ横に振って九十九くんの言葉を否定し、おやすみ、と言うとルカは廊下へ消えた。

「夕月、いい??話聞いてもらって」

「もちろん。どうしたの??」

安心させるように微笑むと、彼は話し始めた。

「十瑚ちゃん、ルカを好きだろ」

「昔好きだった人に似てるだけって言ってたけど」

「それでも好きなんだよ」

「そうかもね」

何故今更その話なのか不思議だったが、真剣な九十九に調子を合わせる。

「それに、ここには沢山男がいるよね」

「それがどうかしたの??」

話が突然見えない方向にシフトした。ますます不思議で、思わず聞いてしまう。

「いつか、十瑚ちゃんはここの誰かと結婚するかもしれない」

お互いが異常な程の絆で結ばれた黄昏館の住人達が普通の恋愛が出来るかどうか、僕は疑っている。それでも可能性がないとは言えない。

「そう、かもね」

「そうなったら、いやだなぁ」

唯一無二のパートナーが、突然いなくなる恐怖。絆が強いからこそ、亡くす恐怖は計り知れない。

「十瑚ちゃんがね、女子高生は恋に生きるものだって言ってたんだ。十瑚ちゃんだって、本当は普通の恋人が欲しいのかな。弟の俺じゃなくて」

それは間違いだ。九十九くんがいなくなったら、きっと十瑚ちゃんは壊れてしまう。
これ以上聞いていられなくなった僕は半ば叫ぶように彼に言った。

「違う、違うよ!!世界で九十九くんだけが、十瑚ちゃんを救ってあげられるのに…!!」

「ありがとう、夕月。でも、十瑚ちゃんの好きに生きて欲しいのも本当なんだ。もし十瑚ちゃんに俺がいらなくなったら、いつでも傍を離れるよ」

優しげに微笑んだ九十九くんは相変わらず綺麗な顔立ちだったけど、それは見ているこっちが泣きたくなるほどに哀しい表情だった。

「でも、ね」

「そうなったら、いやだなぁ」

九十九くんは、これからも十瑚ちゃんを愛していくんだなと思った。十瑚ちゃんだけを、愛し続けるんだなと思った。

神様がいるなら、なぜ二人を姉弟にしたのだろう。同じ血族だとしても、せめて離れた血筋であったなら。もしかしたら二人は、普通に出会い、普通に恋に落ち、普通に結婚したかもしれないのに。

それでも僕は、彼らの命の源として、なにより友として、二人の《姉弟》としての絆を信じたい。
自分の指を見つめる九十九くんに、出来るだけ穏やかに笑いかけながら伝えた。

「九十九くん、もし十瑚ちゃんが恋をしたとしても、彼女は絶対に君から離れないよ。一緒に戦って、傍で支えていけるのは九十九くんだけ。世界でたった二人の《叢雨姉弟》でしょ??」

顔を上げた九十九くんは、驚いたような表情だった。

「本当に、そう思う…?」

「はい」

僕ははっきりと頷く。その後にもう一度見た九十九くんの顔は、もう驚きも哀しみも見えなかった。

「そうだと、いいな」

少しだけ口角の上がった口元に、歳相応の無邪気さを感じる。

「きっと、そうだと思いま……あれ?」

返事をしかけて、言葉を切った。廊下のほうから、パタパタと焦ったような足音が聞こえてきたからだ。ルカではない、もっと軽い誰かの…。

足音の主は僕の部屋の扉に着くと、勢いよく叩いた。

「九十九、つくも!!ここにいるの??」

疑うまでもなく十瑚ちゃんだ。普段は礼儀正しい十瑚ちゃんがこんな態度なんて、よほど取り乱しているようだった。

「九十九くん、開けてあげて」

「…うん」

ベッドから立ち上がり、扉をあける九十九くん。彼を見た瞬間、十瑚ちゃんは抱き着いた。

「九十九っ!!こんな夜に部屋に行ってもいないから、私どこに行ったのか心配で心配で…!!」

声から察するに、半泣きのようだ。これだけ想われていて不安になるのも変な話だとは思ったが、それも自分が想うからこそなのだろう。

「夕月ちゃん、夜中にうるさくしてごめんねっ!!私つい、必死で…」

「気にしないで。世界でたった二人の姉弟なんだから、心配して当たり前だよ」

「えへへ、ありがとう」

これだけ愛されていれば、九十九くんはもう大丈夫だと思う。

「二人は本当に仲がいいね」

僕には想像も出来ない程の絆が、彼等の血に、心に、通っている。
だからほんの少しの羨望も込めて言ったのだ。
返事は笑顔の二人と、息ピッタリの言葉だった。

「世界でたった二人の、」

「姉弟だもの!!」




君の愛に溺れて死ねるなら


(一生一緒、)(決して絶えない絆と愛)

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リア友リク《叢雨姉弟》です。

あ、甘くない…!!
最初の予定が狂いまくり。


九十…リベンジしたい!!

Title by Aコース

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あきゅろす。
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