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詰め込み部屋
依存性《89》最/遊/記



「八戒ってさ、煙草吸わねえの??」

悟空はいつも突然だ。
珍しく三蔵が起きる前に出てきたと思ったら、座ってコーヒーを飲む僕に今更な質問を投げる。

「煙草、ですか。なんでです?」

「だって、三蔵も悟浄も吸うじゃん。大人って煙草好きなんじゃねえの??」

全く、本当に迷惑な人達だ。僕のような良識ある大人もいると言うのに、悟空は僕達三人以外の大人と話す機会が無い為に三蔵や悟浄を普通と思ってしまうではないか。

「悟空、煙草は百害あって一利なし、と言いましてね。身体に悪影響しか与えないんですよ」

「じゃあ何で三蔵と悟浄は吸ってんだ??」

「煙草には依存性というものがあって、慣れてくるとなかなか止められないんです」

「へぇ、そんなもんか」

話をどこまで理解したかは不安なところではあるが、とりあえずは伝わったらしい。

「あと、世の大人が皆、校舎裏で煙草吸う不良をそのまま育てたようなろくでもない人ではありませんからね」

きちんとした方もいらっしゃいます、と付け足せば、今度こそ分からなかったようで首を傾げる悟空。

「分からなければ構いません」

「うん??わかった。
でもさ、やっぱり煙草吸わないからだよな」

何がでもさ、なのか分からないが、突然の悟空の行動にそんなことも頭から吹き飛んだ。

がっしりと僕の首に腕を回し、肩口に頬を付けている。

「悟空、どうしたんです??」

「八戒ってさ、三蔵とか悟浄みたいな煙草の匂いじゃないんだ。料理とか、コーヒーとか、シャンプーとか、八戒の匂いがする」

猫のように擦り寄りながら、ふんわりと笑って悟空が言う。あんまり可愛かったので、日頃三蔵に甘やかすなと注意されていることも忘れて頭を撫で、優しく髪を梳いてやる。

「確かに三蔵の近くに寄っても、マルボロの匂いしかしないかもしれませんねぇ」

「うん。八戒は、気持ちいい…」

悟空は未だに僕にくっついているが、ぐいぐいと擦り寄ることは止めたようだ。ほっと一息つく反面、少しばかり淋しい。
だが、悟空の言葉が若干拙くなっているのを感じ、声をかけた。

「悟空、まだ眠いんでしょう」

三蔵一行の中で朝型人間は僕だけだ。他の三人は、朝は起こすまで寝ていたりするのに、今日は目が覚めてしまったのだろう。いつもと大分違う睡眠時間に、身体がついていけていないようだ。

「ちょっとだけ…」

「まだいつもより大分早いですよ、ベッドに戻ったらどうです??」

状況からすれば妥当な判断だったはずだが、悟空は首を振る。

「もうちょっと、このまま」

言いながら寝てしまいそうなくせに、離れるのは嫌だと言う。本当に可愛い生き物だ。三蔵が拾ってきたのも、悟浄がやたらからかいたがるのも頷ける。
そう言う僕だって、思わず悟空以外なら有り得ないことを平然とやってしまう。

「だったら悟空、ここにどうぞ」

返事を聞くより早く、悟空の腰に腕を回して膝に乗り上げさせる。
最初の数秒こそ唖然としていた悟空も、状況が分かると嬉しそうに笑う。

これだけで、やって良かったと思えるんだから重症だ。それも悟空が愛しいから、という理由なら悪くないと考える。

「へへっ、八戒あったかい」

数分も待つことなく聞こえる寝息に、また笑みをひとつ。

三蔵や悟浄に見つかったとき面倒なことになるなんて、今の僕には関係のないことで、僕はこの温もりを離したくないと思っている。

それでいいじゃないかと、開き直って悟空の背を撫でた。



(愛の枯れたはずの男と)(愛を知らない少年の)(ちょっと進歩のお話)




気付いたらもう、離れられない。




******
リア友リク《89》です。

いやはや、私にとってみれば新規開拓のカプでした。見たことのないカプなので、友人は茨の道を進む勇者なのでしょう…!!

リベンジしたいジャンルです。



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あきゅろす。
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