NL部屋
攻めていい日なのよ!《順リコ》バレンタイン記念
バレンタインでありがちネタ。お約束は正義ですから!
部活が終わり何とは無しに部室で喋っていると、小金井が急にふて腐れ始めた。
「いいよなー日向は。俺なんて姉ちゃんしか宛てないよ!!」
「何の話だよ」
「決まってんだろ、バレンタインだよバレンタイン!!」
ああ。そういえばそろそろそんな時期だったような気がする。というか気付けば明日か。スタメン陣で彼女持ちは俺だけだから俺に文句が来たんだろうが、小金井の考えはチョコレートより甘い。
「お前は分かってねえ。あいつは俺よりイベントよりバスケが好きなんだよ…!!チョコ作る暇があれば新しいメニューでも考えるだろ」
「それはそれで悲しいね…」
どうやら伊月の同情を含む目線は気のせいではないようだ。そしてこいつは月曜日辺りに結構な数を貰うんだろう。ひがむならこっちをひがむのが正当ってもんだ。
「それに、黒子だってあのマネージャーがいるだろ。あの分じゃココに乗り込んででも届けに来るかもな」
「そっか!!黒子もいーいーなー」
小金井は俺の言葉にあっさりと乗せられて、標的を黒子に代えた。
「主将、面倒だからってこっちにふらないで下さい」
ごめん、黒子。謝るから主人公にあるまじきマジギレ顔はやめろ。
「カントクだって一応女なんだから、本命忘れるってこたねえだろ、ですよ」
「今日は火神が一番優しいな…変な敬語も許す気分になる」
ぐだぐだと喋りつつ、土曜日の日が暮れた。
「はい、今日はこれで終わり!!」
「っした!!」
今日も元気な我らがカントクの号令で部活が終わる。運動部独特の省略された挨拶に満足したのかリコは軽く頷いた。が、すぐに何かを思い出したような表情に変わる。
「ごめん皆、ちょっと待ってて!!」
それだけ言ってパタパタと体育館を出ていくカントク。俺はといえば、とりあえず帰るなよ、と部員に呼び掛けることしか出来ない。
心当たりがないと言ったら、嘘になるんだけど。
「か、カントクどうしたのかなー??」
「小金井、素直にチョコだといいなって言えばいいのに」
「気にしてないフリしたいのが男心だろー!?」
当然のようにチョコの話題になる男共に苦笑しながら、とりあえず貰えない事態は回避出来そうだと胸を撫で下ろす俺。健気。
「はいはいお待たせー。
ジャーン!!」
戻ってくるなりリコは手に持っていた箱をがばっと開ける。中には行儀よく並んだチョコレート。
当たり前のように市販だが。
いや、そもそも、体育館に菓子の持ち込みは禁止のはずだが。
「おい、体育館で菓子食うとかとんだ暴挙だろ」
とりあえず突っ込んでみるも、誰も聞いてなさそうなので諦めた。一口で食えばそこまで汚れないだろう。
気がつけばいつの間にか全員がチョコレートを貰っていた。彼氏が一番最後ってどうなんだ、と思いつつ、俺も貰おうと手を伸ばす。
が。
「俺ももら「さぁ、みんな取ったわね!!」
カントクは俺の手が届く前に、勘違いでフタをパタンと閉めた。こうなると部員がいる前で《俺まだ貰ってねえよ!》と言うのはプライドに障る。結局出した手を素早く引っ込め、リコの号令を何食わぬ顔で聞いたのだった。
カントクを送る道中、会話が若干上の空になりながらも俺の頭にはチョコレートが飛び交う。女々しいのなんて分かってる。カントクが男前なのがいけないんだ。
最終的に、今更カッコ付けるような間柄でもなければ、女々しさを隠しておかなければいけない人でもない。思ったことを言わないのは、逆に裏切り行為だ。
と、都合よく結論付けて口を開いた。
「なぁ、リコ。俺、チョコレート貰ってないんだけど」
「あら、当たり前よ。順平が取る前に閉めたんだもの」
ケロリと言い切るリコ。何だ何だ、嫌がらせか??
「部員の分まであって俺の分がないのは酷いんじゃないですか」
一応付き合ってるんだから、さ。
かなり自信をなくしながらふて腐れた俺を見て、リコは柔らかく笑った。
「ないなんて言ってないじゃない」
言ってからリコは鞄に片手を突っ込み、掴んだものを自分の口に突っ込んだ、と思ったら俺の襟首を締め上げ、一気に下に下げる。思いっきり体制を崩した俺はグラリと傾き、そのまま唇を唇にぶつけられた。ガッと開かれた歯の間から、何かが押し込まれる。
「んぅ!?」
「疲れた時には甘い物よね〜」
リコは鼻唄でも歌い出しそうな機嫌のよさ。対して俺は体温が跳ね上がって思考を巡らせるどころではない。しばらく突っ立っていた後、やっと口に入っている物の正体に気付いた。
「チョコレート…」
「たまにはサプライズもないと!!」
正直意味が分からないが、インパクトだけはデタラメに強かった。恥ずかしさも第一級だ。いや、嬉しくないなんて嘘でも言えないっつーか嬉しいんだが!!
リコの思惑通りになったのが些か釈然としないので、少しだけ文句を言う。
「他の奴らと同じモンかよ」
「学ランのポケットってあったかいわよね!」
意味不明だ。だが確かに手が冷たいので、何となくポケットに突っ込む。
ガサリ…
「ん??」
手を入れた瞬間、いつもと違う音を立てるポケット。中を探れば、包みが出てきた。
小さいけれど綺麗にラッピングされた、手作りらしきチョコタルト。
「え…え!?いつの間に??」
「今の間によ。その様子じゃー気付かなかったわね??」
当たり前だ。体育館で菓子食うのと比べものにならないレベルの暴挙に、頭がいっぱいだったんだから。
「これも含めてサプライズよ」
悪戯成功、大満足の表情のリコ。
何と言うか、勝てないなぁと思う。そんな彼女だから、好きなんだけど。
ただし、やられっぱなしはやっぱ悔しいのでこちらからも一つだけ仕掛けよう。
「これだけか??」
「え…、っ!?」
わざわざ手作りしたんか、ありがとう。渡し方も驚いたけど可愛いトコあんじゃん。
言いたいことは結構あるんだけど、それは後からでもいい。
今は、触れ合っていたい気分なんだ。
(恋する乙女は無敵なの!!)(君がいれば、ヤなコトなんてないんだから)
******
二日の遅刻、大変失礼しました。バレンタインはスルーしちゃあノマカプ厨の名が廃る!!と、なんとか書き上げました。
題名は、私が《バレンタインは女子が攻める日》だと思っていることから来ています。←
皆様ハッピーバレンタイン!!
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