NL部屋
たまには、ね!《順リコ》
付き合ってる前提。なぜなら私がNLで同意なしを好まないからです。(BLならおkばっち恋b←)
カントクの男前度、当社比二倍。
日向の乙女度、当社比五倍。
ふと、気になった。
「日向君ってさ、すっごく視力低いの??」
「あー??最近測ってねーけど、結構悪いほうだよ」
それがどうした??と不思議そうに聞いてくる日向君に、笑いながら返した。
「何でもないのよ。ただ、プールでもかけてるから相当悪いのかなって」
「まぁ、部員が全員見えないと困るからな」
何気なく眼鏡を外しながら日向君が言う。久々に見た眼鏡のない日向君に、ちょっとドキッとしたのは秘密だ。
「あー、やっぱ見えないわ。眼鏡考え出した人は偉大だな」
「何よそれ」
くるくると部室中を見回す日向君は、どうしても裸眼だと幼く見える。何だか可愛くて少しだけ頬が緩むが、眼鏡のない彼がそんな微妙な変化を見分けられるはずもない。怒られなくてほっとした反面、ちょっと淋しい。
構ってほしくて、思わず手を差し出した。
「それ貸して?眼鏡、かけたい」
「は??お前自分のがあるだろ」
「家に忘れちゃったの」
いいから貸して、と言えば渋々ながら眼鏡を寄越してくれる日向君。
「かけるのはいいけど、膝で割るなよ」
「割らないわよ!!」
私をどういう人間だと思っているのか、日向君は半ば本気で私に言う。
失礼だ、と心で憤慨するが、眼鏡もフィギュアも膝でバキバキ割ってきた身からすれば何も言い返せることはないので黙っておく。
「うわ、すご。ぐにゃぐにゃで何にも見えない」
日向君の眼鏡は度が強すぎてピントがなかなか合わず、全ての物が歪んで見える。真正面でそこそこ近距離にいる日向君さえ髪と肌と制服の色が分かるだけで、顔の識別はまるで出来ない。
「目はいいに越したことないんだからそれでいいんだよ」
「こんな近いのに日向君の顔も見えないわよ」
「俺も今、カントクの顔全然見えてない」
その後もしばらくかけていたが、ピントが一瞬合ったと思ったらすぐにぼやけ、一向に使いこなせる気がしない。それどころか頭までクラクラしてくる。私は諦めて眼鏡を返そうとした。
「やっぱり私にこの眼鏡は無理だわ…って、何してるの!?」
教室を見回すのをやめて眼鏡に手をかけた瞬間、目の前に迫ったのは日向君の顔。
「ん、近ければ顔見えるかと思って」
ほら見えた。
いつもよりずっと幼い顔と、いつも部員を見ている目で私を覗き込んで笑う。
なんか今、キュンとした。私は眼鏡を静かに外す。
「恥ずかしいけ…んぅーっ!?」
日向君の名誉の為に口添えしよう。彼は所謂ヨコシマな考えで近付いて来たわけではない。ただ単に見えなかったから、見える位置まで近づいただけ。
ヨコシマな事を考えたのは、私だ。
なので当然、唇を塞がれたまま声にならない悲鳴を上げたのは日向君である。
私はしばらく堪能した後、彼を開放した。
「か、カントク!?何すんだ、い、い、いきなりっ!!」
「んー、日向君がこんなに近くに来たのが悪いと思うのよね。キスして下さいっつーような距離にいるのが悪い」
「だからってせめて立場逆だろうが!!何が悲しくて少女漫画のヒロインみたいなことやらされてんだよ俺は!!」
部室の明かりはもう蛍光灯に元気がないので少し薄暗いが、それでも日向君の顔が染まっていくのが分かる。
そんなんだからヒロイン扱いになるのよ。
「もういいっ、眼鏡返せ!!」
日向君の赤面なんて年に何回見られるか分かったもんじゃない。じっくり見ておこうと凝視していると、日向君の手が伸びてきて私の指から眼鏡を奪った。
「可愛いわよ、日向君」
「自分の女に可愛いとか言われて喜べるか!!」
ちゃき、と眼鏡をかけながら半ば叫ぶように主張する日向君。
自分の女、だって。勘違いしてるわね。
「日向君、私は日向君の女じゃないわよ??」
驚嘆、のち理解不能、のち不安。コロコロと表情が変わって面白い。
「何言ってんだ、俺はお前の彼…」
焦った口ぶりも悪くないと思うけど、ここは少し黙ってもらおう。
今度は手で彼の口を塞ぎ、笑う。
「あなたが、私のモノなの」
驚愕、のち赤面。私より、いいえ、もしかしたら桃井さんよりもヒロインの素質があるんじゃないかしら。手を離しても口を開くことのない彼に、もう一度口付けを。
(たまにはこういうのも悪くないんじゃないかしら)(もう二度と!!二度と陥りたくないシチュエーションだ…!!)
*****
はい、日向の性別を疑う程の今作、如何でしたか??
なんでこうなったかと言えば、巻頭カラーでのリコたんの男前度に起因します。かこよすぐるのぜ…!!
カントクが男前なら、日向は乙女にしないと、という思い付きの元に出来ました。本当は逆の立場でした、お約束ネタになるはずでした…。
反省はしている、しかし後悔はしていない。
↑これ言うのも二回目なんですが( ̄▽ ̄;)
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