ＮＬ部屋
イタズラ志願《順リコ》ハロウィン記念フリー
秋といえばやっぱり書いておかなくては…。
「トリックオアトリート！！」
「…マジで？？」
満面の笑顔で言った俺の恋人は、自慢じゃないが超がつくほど可愛かった。
《イタズラ志願》
「男子のくせに着替え遅いわよー」
「しゃーないだろ、全員終わってからじゃないと鍵かけらんねーし」
大きなスポーツバッグを肩から提げて、リコの隣を歩くのが習慣になってから大分経つ。歩いて１０分の家に送るのも、もはや習慣だ。
「そういえばもう１０月も終わりね」
「言われてみればそうだな、１１月は記念日系ないから休みなくて面倒だよな」
「あら、その前に一大イベントがあるじゃない」
なんでもない世間話をしながら歩いていると、不意にリコが意味ありげに笑った。ドキリとしながらも嫌な予感もして、俺は探るようにリコを見る。
「なんかあったっけ…？？」
「ううん、何にもないわよー」
語尾に音譜だかハートだか飛ばしてそうなリコの台詞。ニッと笑う口元。もう、予感とか言ってられなくなってきた。
「一大イベントとか言ってただろ、さっき」
「なぁんでもないわ！！
じゃあ家ついたからまた明日ね」
笑顔で手を振る姿に一瞬見とれ、もっと一緒にいたいと願う。
って、今そんなもん願ってる場合じゃなかった。
明日、１０月最後の日、何が起こるのか考えたくもない頭で、何とか考える。が、所詮スポーツ馬鹿が使える脳みそなんてたかが知れてる訳で、結局深くも考えずに眠り込んだ。
「トリックオアトリート！！」
「…マジで？？」
で、冒頭に戻る。
確かに今日はハロウィンだ、言われてみればハロウィンなんだ。でも高二にもなって今更やるか？？
しかも土曜日、部活で。
なんて考えて周りを見ると、やってるんだ、これが。水戸部がお菓子配ったり、小金井が飴玉食べてたり。
昨日、やたらお菓子を配っている女子を見かけたのはこのせいか。つーかその時点で気付けよ俺。
「マジって、当たり前じゃない」
「去年もやってないし、何で今更」
「いーいーの。それよりホラ、トリックオアトリート！！って言っても、日向君はお菓子とか持たない派よねぇ？？」
ニヤニヤとこちらを見るリコ。俺はポケットから入っているはずのない飴玉を探す。勿論、見つかる訳がない。
やばい。
直感がそう告げる。
今度はどこかに逃げ道を探すように視線を部員達に向けると、リコを挟んで一番近くには伊月がいた。小さなビニールの袋に詰められた、手作りらしいお菓子を食べている。
ごめん、それ作って伊月にあげた子！！
「伊月、それ投げろ！！」
「え、日向？？って、あー、成る程。ほらよっ」
最初こそ戸惑っていた伊月だが、素早く状況を把握、正確に俺の手元にお菓子を投げた。
さすが、司令塔。
さすが、鷲の目。
心の中で伊月に深々と頭を下げ、リコにお菓子を差し出した。
「ほい、お菓子。欲しかったんだろ？？」
「えっ、ちょっと、ズルいじゃないそんなの！！」
「聞こえませーん」
お菓子と俺を交互に見ながら文句を並べるリコに、これみよがしに両耳を手で塞いだ。
「男のくせに遅いわよっ」
「それ昨日も言ってたな」
いつものように、リコの隣で歩く。リコも先程あんなに文句を言っていたことなど忘れたようで、当然のように俺を待っていた。
「でさ、１１月ってやっぱ祝日を増やすべきだと…って、リコさん？？」
いつものように世間話を始めて、リコも楽しそうに喋って。全ていつも通りのはずだったが、急にリコが足を止めた。
「リコ？？どうした？？」
何度話し掛けても鞄を胸に抱いて黙ったまま。流石に心配になって早足で近寄り、俯いた顔を覗き込んだ。
ちゅう…
ん？？
俺は今、リコの顔を覗き込んでいて。リコは俯いていて。
じゃあ、唇に感じた一瞬の温もりは？？
少し屈んだ体制のまま、眉間に皺まで寄せて考え込む俺。するとリコが、がばっと音が付きそうな程勢いよく頭を上げた。
「や、やっぱりあれはズルいと思うのよ！！伊月君のお菓子だし！！だ、だから…っ」
「だから、悪戯？？」
やっと背筋を伸ばした俺は、唇に親指で触れながら問う。真っ赤な顔で目を逸らしながらコクッと一度だけ頷くリコ。
全く、可愛いことしてくれる。
心から幸せな笑みが零れた。
「トリックオアトリート」
「えっ？？」
「だから、トリックオアトリート。お菓子か悪戯か二択だぜ？？」
俺は知ってる。普段からお菓子を持ち込まないリコが、ハロウィン用にたまたま持っていたお菓子は部員に全て配っていた。
つまり、今のリコはお菓子を持っていない。
「さ、どうする？？」
聞きながら俺は、彼女の背中と頬に手を添えた。
（可愛い恋人に、お菓子より甘ーいイタズラ！！）
*****
ハロウィン記念、如何でしたか？？
これの原案は私のノートの端に書いてある《ハロウィンねた》という項目の一つです。あと四つくらいありました。
でもそれには《攻めリコ、イタズラするわよー、お菓子持ってる、つまらない、イタズラ発動》と書いてあったんだけど…何一つクリアしてない！！
さ、どうする？？は、武/装錬/金のパピ様の台詞から。
そして３０分遅刻ですいませんm(__)m！
無駄にフリーです、よければ貰ってやって下さい…！！感想は大喜びしますが、誹謗中傷は心の中に閉まっといてやって下さい。
［*前へ］［次へ#］
[戻る]
[小説ﾅﾋﾞ|小説大賞]
無料HPエムペ！
携帯モード]
[
URL送信]
