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ブルーノート
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夏休みがこんなにも長く退屈なものだなんて今まで知らなかった。本当なら今ごろは、ソフト漬けの毎日を過ごしていたはずなのに。

気のせいか、肌の色から黒さが抜けたような気がする。ソフトは大好きだけど、肌が焼けて男の子みたいになるのだけは嫌だって友達とよく話していた。でも、自分の肌が少しずつ白さを取り戻していくのを見ていると、いまはものすごく寂しい気持ちで泣きそうになる。

「手術の日程が今週末の金曜日の午後一番に決まったよ」
回診に来た沢田先生が、カルテに高そうな万年筆の先を滑らせながら言った。
「先生、失敗しないでね」
冗談混じりに私は答える。確かに手術なんて初めてだし怖いけど、手術成功率99.9%の神の手と称される沢田先生だから安心感はある。
「そうだね。心してオペに臨むよ。女の子の大切な身体だからね」
「よろしくお願いします」
「もちろん」

沢田先生はあの時以来、私の前では一度もソフトの話題には触れない。気を遣われるのは嫌だけど、出来れば私も触れたくないから先生の配慮はありがたかった。

毎日部活が終わってから見舞いに来てくれる皆の前で、笑顔を保ってソフトの話を聞くだけで本当はすごく辛い。

大会に出る皆への精神的な影響を懸念して、私がソフト部を辞めたことには部員への箝口令がしかれていた。だから私は、皆の前でとにかく平然を装った。




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