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父 1
織田さんの説明をする前に、少しだけ昔の話をしよう。




これは、父、総一の話である。





椿 総一(ツバキ ソウイチ)は、
僕らの父であり、
椿グループの社長でもあり、
さらに、ある暴力団の総長の命の恩人である。



父、総一の性格を一言で表すと、「お人好し」だ。

道に迷う人がいれば、案内をし、
知り合いに仕事を探している人がいれば、仕事を紹介し、
金に困っている人がいれば、金を貸す。

そんな人だ。



まあ、こんな性格だからか、人からの信頼は厚い。

しかも、一家の父であり、さらに社長なわけで、やるときは、やる。

仕事をしている父は、別人だ。






あるとき、家の近くで人が倒れていたらしい。

らしい、というのも、これは父から聞いた話なのだが。



一人の人が、倒れていた。

心配になった父は、運転していた車を止めさせ、
声をかけに近づいた。

意識は、あるものの朦朧としていて、
これは危ないと思ったのか
車に乗せ、家に連れていった。

家の者に看病させ、一晩泊めた。

次の日、その人は、目を覚ました。

「昨晩は、ご迷惑をおかけしたようで、申し訳ない。」


じっくり顔を見てみると、
自分と同じくらいの歳だった。

「いやいや、元気そうで何よりだ。
 気分は悪くないかい?」


「おかげ様で、すっかりよくなった!
いやー、よっぱらって、道端で寝ていたとは、恥ずかしい!」


恥ずかそうに、頭を掻く彼に、
「飲みすぎたらダメですよ」なんて言うが、
自分もよく妻に言われる台詞だ。


「本当にお世話になった。
 このご恩は、一生かけて返させていただきます。」

姿勢を正しい、深々とお辞儀をする彼の姿は、とても風格があり、
こちらまで、緊張してしまうものだった。







彼を見送り、今日の仕事に取りかかってから気づいたが、
名前を聞くのを忘れていた。



それから、何日かたったある日、
仕事が休みだったので、子供たちと遊んでいると、
家政婦が、凄くあわてて飛んできた。


「ご主人様!!
 お客様がお見えなのですが、、、」


客室に通した、というので
そちらに向かうと、
この間助けた男と、4人ほどの男がいた。

「突然、押し掛けて申し訳ない。
 少しお話をしに、参りました。」


彼にソファーに座るよう促すと、
彼以外の男たちが、ソファーの後ろにビシッと立った。


少し驚いていると、「お気になさらず」と、話を話しはじめた。

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