梓瀞学園
5
それを、不器用な人間だと。
切り捨てないでほしい。
──翌朝
「……」
「よぉ、おはよ」
社が起きるまで、リビングで待っていた。
(見た目寝起き悪そうだから、遅刻覚悟で待ってたけど……7時ジャスト。意外ときっちりしてんな)
「……」
「待った!」
ちらっと横目で俺を見て、直ぐに洗面所へ向かおとした社を、呼び止める。
「昨日は悪かった。正当防衛にしてはやり過ぎた」
「……んなのいらねーよ。もう俺に──」
「関わる」
背中を向けていた社は、ゆっくりとこっちを振り返る。
(うっわ……すっげー睨み。やっぱり寝起き悪いんじゃね? 昨日より3割増し!)
小さく苦笑して、真っ直ぐ社の瞳を捉える。
「俺、お前と友達になりたい。だからお前に関わる」
「っ、……はぁ? ふざけんな! 俺はテメーと馴れ合う気はねーよ!」
「うん。だから、直ぐにとか思ってない。お前が少しでも、俺と友達になってもいいかなーって、思ってくれるまで待つ」
「……それ、押し売りだぞ」
苦そうな顔をして社は両腕を組み、ダルそうに壁に背を預ける。
「そーかも。でもお前には、これ位が丁度いいんじゃね?」
笑って言うと、ふんっと社は鼻であしらい、気まずそうに、視線をキッチンの方へ走らせた。
その左頬は少し腫れていて、申し訳なく思いながらも、笑ってしまった。
完璧な美貌が、その腫れで少しだけ、損なわれている様で。
それは、
完璧な人間など、居はしないと物語っている様で。
(いや実際、男前度が上がってる様にも見えんだけどね。悔しい事に)
「俺は待ってるよ。お前を信じて、ずっと」
それがどんなに嬉しい事か、俺は知ってるから。
お前にも教えてやる。
再び俺へと視線を定めた社は、その瞳を細める。
眩しそうに。
もう、自分にはそれを求める権利など無いんだ、と。
悲しそうに。
「……取り敢えず社。お前暫くは俺と2人きりの時、俺に近づくの禁止な」
「……」
襲われた事に、俺は結構根に持つタイプなんだ。
「そうだな……半径2m位? だから今はここら辺は、俺のテリトリ……」
人が話をしてるのに、社は顔を洗いに洗面所へ行ってしまった。
「っ、人の話聞けよタコウインナー!」
遅刻する。
[*BACk][NEXt#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!