梓瀞学園
4
「何でそうやって、人を信じるの恐がんのか俺には解んねーけどさ──」
「んな事いつ俺が言った!? 誰かに俺の転入理由でも訊いたのかっ!? あ゙ぁっ!?」
社の腕を掴む俺の腕を、社は逆の手で掴み返し怒鳴る。
ぶすり。
また心に、ナイフが刺さる。
否、社が自分の言葉をナイフに変えて、自分の心に刺していく。
「いや、誰にも訊いてねーけどさ。でも、」
「うるせぇ! だったら俺に関わるな!」
ぶすり、ぶすり、
自分で自分の心を傷付け、心が悲鳴を上げる様に血を流す。
啀む社の足元に、心の悲鳴が血の池を作っている。
実際視覚では見えないけど、俺には見えた。
ばっと、社の腕を掴んでいた手を払われたけど、
「社!」
俺はもう一度掴む。
「社、お前は──」
「……あぁそうか。お前、アレか?」
「え?」
何に気付いたのか。
社は眉間を寄せる俺を他所に、1人納得してククッと喉奥で笑い頷く。
「お前……俺に抱いてほしーのか?」
……1分? いや、実際は5秒も経っていないが、俺は社の言葉にピタリと固まり、
「……はあぁっ!?」
素頓狂な声を上げた。
「前の学園でも、お前みてーなのがごまんと居たよ。俺の中身ろくに知らねーのに、顔だけ見てキャーキャー奇声上げて騒いで、抱いてくれって群がるウジ虫。……お前も、そのウジ虫共と同じなんだろ? 俺の顔だけみて騒いで抱いてほしいんだろ?」
蔑む様に鼻で笑って俺を睨むその瞳は、蔑視は勿論感じられたが必死に悲願していた。
“俺の話を聞いてくれ。俺を見捨てないでくれ。俺を信じてくれ”、と。
「抱いてもらえればそれで満足か? あ?」
「んな事──っ、ぃっ!」
伸びてきた社の手を払った瞬間、素早く足払いをされて、フローリングに押し倒される。
(ぁ……頭、痛っ!)
咄嗟に受け身を取れなかった俺は、虚しくも後頭部をフローリングに強打した。
「つっても俺、男抱いた事も抱かれた事もねぇけどな? 男相手なんて気色悪ぃ。……でも」
仰向けに倒れた俺の上に四つん這いになって、社は覆い被さってくる。
「お前、男にしてはガッチリしてねぇし、顔もいいし。一回抱くだけで満足して大人しくなんなら、抱いてやるよ。ただし、もう俺に関わるなよ?」
[*BACk][NEXt#]
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