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檜垣学園
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─1年後、4月(現在)─



***ルークside***


「檜垣(ヒガキ)学園。国内有数の全寮制男子校の一つ。梓瀞(シセイ)学園の次にレベルが高く、敷地の広さは国内トップ。
幼等部・初等部・大学部は別の場所にあり、ここには中等部と高等部。それと寮。一人部屋が許されているのは教師と高校3年生生徒、それに生徒会とその他…、」



流れる様に過ぎていく景色をタクシーの窓から見つめ、ポツリと呟く様に言うと、運転手がバックミラーから気まずそうに僕を見た。


「何か?」


「今仰ったものは、どちらで?」


「ああ、パソコンで檜垣学園の公式サイトを検索したら、間違って個人サイトに引っ掛かってしまってね。そこにそう書いてあって……気付いたら頭に入ってた」


苦笑すると、年老いた運転手も苦笑しながら頷いた。


「そうですか。いや、我が学園の公式パンフレットをご覧になっているのかと思ったら、内容が違ったもので不思議に思いまして…」


「個人サイトだから主観の交じったものだろう、とは思っていたけど。……内容が違うとは、詳しく言えばどこかな?」


すると運転手は、あーと唸り言い淀む。
不躾な質問だったのか?


「……教えてくれないかい?僕、父と理事長に言われるがままこの学園に留学してきたんだ。だからこの学園の事何も知らなくて…。これからこの学園で生活するために、口にしてはならない言葉や、通ってはならない道があるのなら知りたい。貴方も僕の立場だったらそう思うだろ?」


そう困った様に弱々しく笑うと、運転手はそうですねと呟いた。


「…今お坊っちゃまが言った文章の中に、"梓瀞学園"と言う言葉がありましたでしょう?それですよ」


「梓瀞学園?」


「我が檜垣学園理事長の檜垣様と、理事会のお1人である青海波(セイガイハ)様は、梓瀞学園理事長の向前(コウサキ)様とは不仲な関係にありまして…。

ですから、学園のパンフレットや公式ホームページの、学園紹介の文章に"梓瀞学園"なんて言葉は一切出てこないんです」


後部座席に座っている僕は、シートベルトに締め付けられながらも身を乗り出し、運転手に近付いた。


「梓瀞学園の理事長の向前って、あの世界的に有名な大企業の向前グループの当主、向前瀞さんだろっ?!……僕、父に紹介されて一度会った事あるけど、気さくで朗らかなお爺さんだったよ?」


少し興奮気味に息巻く僕を、運転手は穏やかに、けど少し困った様に笑う。


「そうですね。正確に言えば檜垣様と青海波様が勝手に向こうをライバル視している、と言う感じですかね」


大声では言えませんが、と運転手はいたずらっ子の様な笑みをするのでつい僕も声を上げて笑った。


「じゃあ学園では"梓瀞学園"や"向前"って言葉は禁句な訳だね?」


「いえ、それは勿論の事ながら、その学園に通う、月刀(ツキトウ)・箕子部(キシベ)・正治(ショウジ)・睦月(ムツキ)…、この四家の名も禁句です」


「──っ、有名どころばかりじゃないかっ!特に月刀!流石梓瀞学園…」


「そのセリフ、絶対に理事長の前で仰ってはなりませんよ!」


態とらしく、怖がる様に震える運転手に、また僕は声を上げて笑った。




[NEXt#]

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あきゅろす。
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