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檜垣学園
7


今度は目が合った竜田姫君に右手を差し出すと、竜田姫君は困った様に目を泳がせた。


「?」


「ルーク、竜田姫は引っ込み思案なんだ。嫌ってる訳じゃないから、握手は勘弁してやって?」


な?と、微笑みながら行き場の無くなった僕の右手に、リョウは自分の左手を絡めて握ってくる。


「──っっ!!」


すると、文句を言おうと口を開いた僕より早く、竜田姫君が僕とリョウの繋がった手を千切る様に離れさせ、リョウの腕に抱き付いた。


「お?なんだ竜田姫。今日は積極的な甘えん坊だな?」


抱き付いてきた竜田姫君を、デレデレと締まりのない笑顔で見ているリョウは気付いていないのだろう。

竜田姫君が僕を思い切り睨み付けている事を。



間違いなくそれは嫉妬心。



まさかと思って探してみると、予感は的中。竜田姫君の左手首には、リョウのセフレの証であるブレスレットが、ワイシャツの袖口から覗いていた。



………リョウが僕と手なんか繋いだせいで、彼に有らぬ誤解をされたらしい。







***白茅side***


佐保達が席に着き楽しく会話をしている中、どこか元気が無い凌波が気になり、どうしたのかと訊いてみると、凌波はあからさまに嘆息をして言った、


「兄さんに避けられてる」


と。まるで母親に見捨てられて泣くのを必死に我慢している子供の様な、悲し気な顔をする凌波に、コイツの頭の中はいつも副会長のコトばっかだなと忍び笑う。


「お前が副会長に避けられんのっていつものコトじゃん」


「定期的に兄さんの顔見ないと欲求不満…」


テーブルに肘を付き憂いてため息を吐く凌波の姿は、儚く何とも言えない色気を漂わせ、周りで凌波を見つめていた生徒は頬を赤らめ見とれる。


「ソレ薬物依存のヤツの発言みたいだな…」


副会長は解っていないんだろうな……。

定期的に求めているモノが与えられず、禁断症状を起こした凌波がどうなるのか………。


ポンポンと慰める様に隣に座っている凌波の頭を撫でると、もっととねだる様に凌波は俺の肩に頭を乗せてきた。


「リョウちゃん具合悪いの?」


凌波とは逆隣に座っている佐保が、俺の腕に抱き付きながら心配気に凌波の顔を覗き込む。

俺は、大丈夫だよと優しく声を掛けながら、凌波を撫でる手とは逆の手で佐保の髪を撫でる。


そんな俺を、ルークが複雑な顔で見ていた。

そんなに凌波とくっついて、佐保にバレないのか?と思っているんだろう。

大丈夫だと笑ってみせると、ルークは苦笑した。考えている事が顔に出るタイプだな。分かりやすい。


そんなルークの隣に座る哉都と竜田姫も、考えている事が顔に出てて丸わかり。

凌波が俺に甘えてるから、ヤキモチ妬いてる。


……凌波は正直者がタイプなのか?







***ルークside***


「午後の授業サボる人ー!!!」


昼食を終え、食堂を出た所でリョウが楽しそうに弾んだ声でこう言った。


「下らねぇ…」


ポツリと呆れた声で言った哉都は、さっさと食堂を離れ、教室へと向かってしまった。




[*BACk][NEXt#]

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