檜垣学園 12 パンッ、と頭の中で音が響く。 それが銃声なのか、風船が割れた音なのか、そんな事はどうでもよくて。 その瞬間僕は、曇り空が途端に晴れた様な爽快感にも似た納得を覚えた。 「ああ!シルバーのやつだね?」 檜垣理事長がしていて、彼にはシルバーアクセサリーは似合わないと思っていたんだ。 でもそう言う事なら納得。 「そうそう。だから怪しいと思った奴の左手首を見ればいいわけ」 言われて直ぐ、白茅と哉都の左手首を見たが、2人はしていなかった。 2人共見かけはタチに見えるが……、純粋なリョウの友人と言う事だろう。 リョウは哉都を狙っていた風な事を言っていたが。 □■□■□ だが、そう考えた僕の見解は昼食が終わりを迎えた頃に打ち返された。 〜〜〜♪ 「ハイハイハイ」 突然鳴り出した着信メロディー。 白茅の携帯かららしく、彼は箸を置いてスラックスのポケットを探る。 「白茅、食事中だ」 「悪ぃ直ぐ!」 睨みを利かし注意する哉都に、ひょいと肩を竦めてみせ白茅は電話に出る。 全く、と小さく愚痴る哉都に僕は苦笑し、止まっていた手を進めようとした瞬間、キラッと視界の端で何かが光った。 反射的にそっちを見ると、光ったのは白茅の携帯電話に付いているストラップ。 ただストラップが光っただけ。特に気にする事は無い筈が、僕はそのストラップをどこかで見た事がある気がして、 「…──っ?!」 記憶を探る前にそのストラップが何なのか判った僕は息を呑んだ。 「──わかった。じゃあ放課後なー」 「白茅」 「ん?」 通話を終えて直ぐ、哉都は白茅に声を掛け、一度僕を見てから白茅の携帯のストラップを指差した。 「?……、あ!!」 自分を呼んだ哉都を見て、哉都の視線を追って僕を見て、次に哉都が指差した先…自分の携帯を見て。 と、面白い位忠実に哉都の無言の指示に従って動いた白茅は、自分の携帯ストラップを見て目を剥き、気まずそうに僕を見つめた。 「…………気づいちゃった?」 「気づいちゃった」 コクコクと頷く僕に、あちゃ〜と頭を抱える白茅。 だが直ぐに白茅は顔を上げ、力なく笑った。 「ま、いーか。ルークになら知られても」 白茅の携帯に付いていたストラップ。 それは、チェーンタイプのブレスレットを少し弄ったものだった。 「………君は、リョウのセフレだと思っていいんだね?」 窺う様に訊くと、置いた箸を再び持ち白茅は頷いた。 「雰囲気から察するに………知られちゃ不味い事だったのかい?」 「んー…」 「不味いだろ」 首を傾げる本人より早く、答えたのは哉都。 「コイツ、恋人がいる」 ぎょっとして真意を訊ねる様に白茅を見ると、白茅はまた力なく笑った。 「そう。俺には可愛い恋人がいんの。ネコのね。で、リョウとはセフレ。そん時は俺がネコ。つまり俺リバ」 そんな事を聞きたいんじゃない。 [*BACk][NEXt#] [戻る] |