檜垣学園
4
……"帝王"…。
リョウがそう呼ばれる理由が、垣間見えた気がした……。
と言うか、クラスの皆さん。リョウの話聞いてたのかい?
「……でも、今喜んでた子って…殆どネコっぽい子ばかりだね?」
「俺の性癖はあんま知られてねーの。だから俺に寄ってくんのは、殆どネコ」
「…ルークって、留学生の割には日本語うまいな?結構日本とか来てる?」
感心したように、白茅はまじまじと僕を見る。
「そうだね、周りと比べると日本に来てる方かもしれない。それに、留学する以上母国語は一切使わずに生活しようって決めたんだ」
「……真面目な奴だな」
驚き目を丸くして、ぽつりと呟く哉都。
白茅も哉都の言葉に賛同する様に、何度も頷いて僕を見続けている。
何だか照れ臭くて、僕は横で眠そうに欠伸をしているリョウへ話題をふった。
「そう言えば、リョウはハーフじゃないのかい?」
「えー?俺ー?」
机に肘を着きながら、ゆったりとした口調で聞き返す。
眠いらしい。
「昨日会った時から思っていたんだ。髪色や瞳の色、それは間違い無く天然だろ?でも名前は日本人っぽいから、ハーフなのかなって…」
「え?マジで?ハーフなの?」
白茅達も知らないらしく、食い入る様にリョウを見る。
「……………ハーフ、……じゃないような………ハーフのような……」
リョウのはっきりしない答えに、僕はガックリと肩を落とした。
だが僕に比べて二人は、リョウのこう言う曖昧さに慣れているのか、白茅は苦笑をして哉都はふんっ、と鼻であしらい、特に失望した感じはない。
「リョウ、それってどっち─」
「あー止めなよルーク。コイツはこーゆー奴なの。言いたくない事は曖昧にして逃げる餓鬼なの。だからこーゆー時は諦めな」
白茅はリョウの頭をポンポン叩きながら、追究しようとした僕を止める。
ひでー言われようだな俺、とリョウは拗ねてみせてはいるが、否定せず白茅にされるがままと言う事は……つまりそう言う事なのだろう。
………ハーフかどうか位、隠す事ないのに…。
疎外感の様なものを感じて、胸が痛んだ。
………え?
なんで僕がリョウの事で胸を痛めるんだ?
…………………………気のせい、にしとこう。
□■□■□
「……さてと、んじゃ俺次からサボるわ」
2時間目終了のチャイムと共に、リョウはそう言って立ち上がった。
「昼は?」
「別って事で」
リョウがサボるのは良くある事なのか、白茅は軽く手を振るだけ。
哉都は振り返る事さえしない。
「……サボタージュはよくない事だよ、リョウ」
「寂しい?」
「っ、違っ─」
「夜部屋で構ってあげるから、じゃーねー」
「リョウっ!!」
どんなに睨み付けたって、頬に集まる熱はリョウを楽しませてしまう。
「アイツを調子付かせないためには、アイツに反論しない事だ…」
ぶつける相手がいなくなった怒りを燻らせ、仕方無く小さく嘆息すると、前からそんな呟きが聞こえてきた。
[*BACk][NEXt#]
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