novel
俺の唇が狙われてんだぞ?助けろよ!
バスケ部には名物が二つある。
一つは色彩が対照的な、……そしてこれを聞くと本人は怒るが、身長も対照的な、キャプテンと副キャプテンのコンビ。
そしてもうひとつは――……、

「日番谷せんぱーいっ!」
「うるせぇ!」

……女子バスケ部のエース、松本乱菊の日番谷に対するアタックだった。


******



「日番谷先輩、大好きです!」
「………………」
「だから付き合っ」
「断る」
「まだ最後まで言ってないじゃないですか」
「聞かんでもわかる。何回同じこと言われてると思ってる」
「153回ですね!」
「聞いてねぇ……」
しかも数えていたなんて。
日番谷は脱力してがっくりと肩を落とした。

「日番谷先輩、私と1on1してください!」
「はぁ?」
「こういうのはどうですか?あたしが負けたら今後一切日番谷先輩には話しかけない」
「おもしれぇ。乗った」
「おい冬獅郎、いいのかよ?」
「俺が負けると思ってんのか」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
乱菊の笑みが怖い。日番谷が負けたら何をさせる気だろう。だいたい想像はつくが。
「あたしが勝ったら、チューしてくださいっ」
ハートマークかたくさんついてそうな弾んだ口調で、乱菊は言う。
日番谷の顔が思いっきり引きつったのは言うまでもない。


******



乱菊は女子の中では背が高く、ポジションはセンターだ。
当然、

トントントン……

ドリブルは得手でない。
「もらった!」
高い位置でつかれたボールに日番谷が手を伸ばした時、



むにゅっ。



「ひゃんっ」
「……っっっ!?!?!?」
日番谷はものすごい勢いで乱菊からボールを奪おうとした手を引っ込めた。

「やーん日番谷先輩たら、どこ触ってるんですかぁ」
「て、てめっ……」
真っ赤になった日番谷が一歩引く。いつも冷静な日番谷にしては珍しい表情と行動だった。

(あーあ……)
一護は内心ため息をついた。そして心の底から日番谷に同情した。
――乱菊の方が一枚も二枚も上手だ。
当然日番谷が故意に乱菊に触れたわけではない。乱菊が仕組んだのだ。

「汚ねぇぞ!」
「なんのことですか?えいっ」
「あ、」
日番谷が怯んだ隙に、乱菊はドリブルで日番谷の横をすり抜けた。
パスン。
レイアップがきれいに決まった。

「さー日番谷先輩、約束ですよ。チューしてください、チュー」
呆然としている日番谷に、実にいい笑顔で乱菊が言い放つ。
だがさすがは日番谷と言うべきか、この状況を打開すべく思考が働いたらしい。……一護にとってはありがたくない方向に。
「黒崎ッッ」
「ひっ」
矛先が自分に向いてしまった一護は、思わず情けない声を上げてしまった。
怖い。日番谷もだが、それ以上に、
「俺の唇が狙われてんだぞ?助けろよ!」


松本乱菊から一護に向けられた、本当に人が殺せそうなほどの殺気が。


「……すまん、俺は自分の命が惜しい」
「黒崎てめえッッ!」
「はーいはいはい日番谷先輩、往生際が悪いですよー。おとなしくしましょーねー」
ガシッと乱菊が日番谷の腕を掴む。振り払えないのが日番谷のいいところ、もとい弱いところだ。
「そもそもこんな勝負おかしいだろ!?待っ、ちょっ……黒崎ィィィ!覚えてろよォォォ!!!」





一護は悲鳴のような怨嗟の叫びを耳をふさいで聞こえないフリをし、繰り広げられる惨劇から礼儀正しく視線を逸らして見なかったことにした。








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一万打企画。miyu様に捧げます。手をつけるのが遅くてすみません。まだ来てくださっていることを願って…

日乱+一で、狙われる人=日番谷、狙う人=乱菊、助ける人=一護、助からなければもっといい!ってことで、たいちょにはかわいそうなことになってもらいました(笑)合間合間はしょりましたが…はっちゃけた乱菊さんが書いてて楽しかったです^^*
素敵なリクエストありがとうございました!


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