novel
二代目拍手お礼
※日雛花街パロ







カラカラカラ……。
立派な作りの扉を開けると、
「いらっしゃいませ」
日番谷を迎える落ち着いた声。
指をついて出迎えたのは、男と女の二人組。
「日番谷様。お腰の物をお預かりいたします」
「ああ」
腰に差していた大小を取り上げて渡せば、下男がそれをうやうやしく持って行く。

「今日も来たんですか?ここのところ毎日ですね」
残った女が、少しあきれたように言う。
女、というよりは少女、と言った方がしっくり来る幼い容貌。
――雛森桃。この見世一番の花魁付きの禿だ。
「……いいだろう、別に」
罰が悪くてそっぽを向いたまま言えば、雛森がくすりと小さく笑った気配がした。
「冗談です。姐さんは助かるって言ってました」
コロコロと笑う雛森に、日番谷も眦を緩める。

ここは花街。眠らない街。男が女を求める欲望の街。女が男に魅せる夢の街。



――日番谷は、女を抱かない。
線香が尽きるまでの間、ただ肴と酒で語らうだけ。一風変わった客として有名だった。



「これ、やる」
「わぁ、ありがとうございます!……久利屋の葛餅ですか。姐さんもこれ、好きなんで喜びます」
「おまえも好きだろ。それはおまえにだ」
「え?でも……」
困ったような雛森に、日番谷は手にした酒を示してニヤリと笑う。それは美酒と名高いもの。
「アイツにはこっちのがいいだろ」
「……ふふっ」
口を押さえて楽しそうに笑う雛森。笑い声と共に簪がシャラシャラと涼やかに鳴る。それも以前、日番谷が贈ったものだ。

「お待たせしました、日番谷様」
「乱菊姐さん」
そっと襖を開けて、うやうやしく一礼した美女。この見世一の大夫、乱菊だ。
「こちらへどうぞ。桃、御膳を用意して」
「わかりました」
乱菊に指示され、ぱたぱたと雛森は奥へかけてゆく。
視線でそれを見送った日番谷に、乱菊は楽しそうに言った。

「お邪魔してすいませんねぇ」
「うるせぇよ」
眉根を寄せて苦々しく、日番谷は返す。





――叶う夢と叶わない夢。花街は、眠らない夢の街だ。








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二代目拍手お礼ではこれが一番お気に入りでした。
客×花魁、客×禿、旦那の息子×花魁ていう三パターン書いたのですが。一番報われてないこれが一番好き(笑)
日雛は早く公式でほのぼのしてほしい。最近かわいそうで見てられない。


あきゅろす。
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