novel
この勝負に勝った方が今日一日、王様だ
「草冠!」
ディフェンスの間を縫って、日番谷から草冠にパスが通る。
「はいっ!」
草冠の手からボールが離れる。きれいな弧を描いて、ボールが飛んだ。
パスン。
見事なスリーポイントシュートが決まった。

「よし、休憩!」
日番谷の号令に、それまでの空気が緩む。三々五々散っていき、水分補給をする者、汗をぬぐう者、様々だ。
一護はペットボトルに口を付けた日番谷の隣に座り込んで話しかけた。
「なぁ、冬獅郎」
「なんだ」
「今のフォーメーションさ、逆サイドの俺ががら空きなんだよ。位置からして草冠へのヘルプは早いから、草冠から俺にパスを回して俺が打った方が確実なんじゃねぇの?」
ジロリ、下から見定めるように見られて、一護は少し怯んだ。

「おまえがいる位置、遠いだろ。スリー打てんのかよ」
「打てるに決まってんだろ」
「そういう意味じゃねぇ。草冠より入んのかって聞いてんだ。他のポジションの領分に踏み込む前に自分の仕事をきっちりやれよ」
「んだとぉ……!?」
険悪な雰囲気が漂い始めたのを見かねて、草冠は日番谷と一護の会話に口をはさんだ。
「冬獅郎、俺は別に黒崎と代わっても構わないよ」
「おまえが構わなくてもチームが構うんだ」


沈黙。
後、睨み合い。


「……冬獅郎、俺と勝負だ!」
「望むところだ」


*******



「チィーッス」
委員会で部活に遅れた恋次は、いつものように挨拶をして、バッシュを履こうとして――その異様な空気に固まった。

「ハッ、副キャプテンがざまぁねぇなぁ、黒崎。十本先取だからな、俺があと一本決めたら俺の勝ちだ。約束は守ってもらうぞ」
「できるもんならやってみやがれ!」
なんだなんだ、この白熱した空気は。約束って何だ。どうして一護と日番谷の一対一だけが行われていて、他の部員がそれを眺めているんだ。おー!なんて無責任に拍手を贈っているヤツ、おまえら練習はどうしたんだ!

「何があったんだ?」
状況がまったく読めなかった恋次は、壁に寄りかかりながって静観している草冠に聞いた。
「この勝負に勝った方が今日一日、王様なんだって」
要領を得ない返事が返ってきて、恋次は深々とため息をついた。にこにこと笑いながら状況を眺めている草冠は、人が良さそうに見えて案外そうでないことを恋次はよく知っている。





「……止めてやれよ」
バスケ部随一の常識人・阿散井恋次のつぶやきは体育館にむなしく響いた。










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個人的に草冠くんが書けて大満足です^^^^草冠くんはシューティングガード。
石田ボイスが素敵ですよね。映画は何かちょっとアレですが、ドラマCDの方は正しくイケメンな声でおいしいと思います(^p^)聞いたことない方はぜひ聞いてくださいませ。


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