novel
純粋アンバランス
※単体でも読めますがいちおう、title「男子学生の友情で10題」番外編です。







トーン、トーン、トン……。
軽快なドリブルの音が、朝の校庭に響いている。
空座高校のグラウンドの端、アスファルトのバスケットコート。リングは可動式のもので、今は片方だけが出されていた。
コートに人影は、一人。

少年はスリーポイントラインまで下がると、ワンハンドシュートの構えを取った。
パスッ。
ネットをすり抜ける音と共にボールはテンテンと転がる。彼はそれを取るために地面を蹴った。
ナイキのバスケットシューズ、外用。軽さがお気に入りの一品だ。
転がるボールに近づくと、ひょいと片手で拾い上げる。そのままフックシュートを決めた。



少年――日番谷冬獅郎。
この春から空座高校に入学する新一年生だ。身長はかなり低い。

ゴール下から、日番谷は反対側に向かってドリブルで駆ける。
右手ドリブルから、足の下を通して左へ。同じ手のままくるりと回転、最後に背中を通して再びボールは右へ。――三人抜き。
日番谷はスリーポイントラインまで来るとくるりと回転し、ゴールと向かい合う。そのまま後ろに跳びながら――シュート!
フェイダウェイ・シュート――しかもスリーポイント。
難しいシュートを難なく決めた日番谷は顔色ひとつ変えることなく、転がるボールを拾いに向かう。と、他人の手がそれを拾い上げた。

「あ?」
「すげぇな、おまえ!」
拾い上げたのは、オレンジ頭の少年だった。
「すごいな!レッグスルーとか、バックチェンジとか、俺できねぇもん。しかもフェイダウェイで決めちまうし!うまいな、おまえ」
妙にキラキラと輝いた目で見つめられて、日番谷は面食らった。ドリブルがうまくなったのは背が低いための不可抗力だ。
「おまえバスケ部入んだろ?俺もなんだ。よろしくな!」
ニカッと笑い手を差し出されて、日番谷は躊躇いながらもその手を握り返した。
「黒崎一護、フォワードだ」
「……日番谷冬獅郎、ポイントガード」





――二人がコンビを組むようになるのは、もう少し後の話。







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