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企画部屋
わかり合えるまで・2
―――彼らのいた本丸では、乱藤四郎は夜伽に使われ、折られた刀だった。
新しい本丸に来て、その乱藤四郎がいると知った時。一期の胸に去来したものは、「今度こそ守らなければ」だった。彼の弟達は皆、使い捨ての道具だったから。けれど。
「自分だけが―――自分達だけが傷ついてるみたいな言い方、しないでっ!!」
そこにいた乱藤四郎は、間違いなく審神者を慕っていて。彼は、純粋に審神者に愛されているのだと知って。心底良かったと、思ったのだ。

短刀達が中庭で遊んでいるのを一期が見ていた時。ふと気配を感じ振り返れば、審神者が自室の前に立っていた。―――慈愛の込もる笑顔で、短刀達を見つめていた。
それに息を飲んだ一期の視線を追い、短刀達も審神者を見つけた。五虎退が怯えたように身震いし、そんな彼の背を秋田が撫でる。審神者はぱちくりと瞬いて、苦笑をこぼして自室へと入って行った。
近づきもせず、声もかけず、接触を何もかもしなかった審神者。そんな彼女を慕う乱を薬研が捕まえ、彼らが使っている広間に引きずり込んだのは先ほど。
「………いち兄達も、主様を悪く言うの?」
強く自分の兄弟達を睨み据え、乱は言った。
一期は深呼吸を1つしてから、首を振る。
「いいや。ただ、1つ聞かせておくれ、乱。お前は今………幸せかい?」
一期からの問いに乱は目を見開く。そして、
少年はこれ以上ないほど幸せそうに笑った。
「うん。ボクは今、とても幸せ」

それから乱は一期達の元へ遊びにくるようになった。そのたびに審神者から貰ったというお菓子を配る。子供が好きそうなそのお菓子は、審神者が自分で選んだものだという。
「みんなでお食べなさいな、って主様が言ってたから」
それに、みんなで食べた方が美味しいんだよ、と。
乱はいつも、幸せそうに笑っていた。
「いち兄。もう………良いんじゃねぇかな」
乱が帰った後、薬研が唐突に呟いた。その言葉が誰のことを指し示しているのか、すぐにわかる。一期はゆっくりと息を吐き、小さく、そうだなと返した。

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